著者
斎藤 徹 長谷川 慶子 長谷川 賢
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.15-20, 2002-07-31 (Released:2014-02-26)
参考文献数
25
被引用文献数
2

歯科治療による口腔機能の改善が, 高齢者の食事形態および日常生活活動 (ADL) を改善させるか否かを検索した。対象は1999年1月から2001年12月の間に当科にて歯科診療を施行した65歳以上の高齢者117症例とした。食事形態は, 常食, 米飯+キザミ食 (主食: 米飯, 副食: キザミ食), 粥+常菜 (主食: 米粥, 副食: 常菜), 粥+キザミ食 (主食: 米粥, 副食: キザミ食), ミキサー食, 経管栄養の6形態に分類した。また, ADLは食事, 入浴, 排泄, 更衣, 移動の5項目をそれぞれ自立, 一部介助, 全介助に分類した。以上の症例中, 歯科治療後に食事形態が1段階以上改善したもの: 59例 (50.4%), 不変: 53例 (45.3%), 悪化: 5例 (4.3%) であった。歯科治療前と比較して常食が著明に増加し, 粥+キザミ食が顕著に減少した。また.ADLの自立度のいかんにかかわらず, 約4割~6割の症例で食事形態の改善が見られた。他方, ADLの評価5項目中, 1項目以上で改善が認められたもの: 4例 (3.4%), 悪化したもの: 5例 (3.4%), 不変: 109例 (93.2%) であった。歯科治療前後でADLに著明な変化はなかった。