著者
長谷川 聡 長谷川 昌広 下 理恵子 御橋 廣眞
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.93-101, 2001-04-01 (Released:2019-07-01)

ビデオ顕微鏡法によって捕らえた生体運動の様子を,ディジタル動画像解析によってコンピュータ解析し,対象物の運動速度や変形に関するパラメータを抽出する方法について,具体例を挙げて示し,その得失を議論する.具体例としては,「シャジクモ・ミオシン顆粒の運動性の解析」「in vitro滑り運動系でのアクチンフィラメントの運動解析」「メダカ初期発生卵の律動性収縮運動の解析」を挙げるが,これらは,運動する生体材料の形状と運動の性質により,それぞれ,「重心点の運動」「ひも状物体の長軸方向滑り運動と変形」「球体の変形と表面波の伝播運動」の例と見ることができる.重心点の運動に関しては,運動性を表すパラメータとして,速度ベクトルの他に持続性(persistence)などを紹介し,時間積算した画像から熱ゆらぎ運動と方向性のある運動との区別を行った例を示す.ひも状物体の2次元滑り運動と変形に関しては,重心点の運動にはない問題点として,速度と変形の計測に関する相補性(complementarity)を指摘する.また,球体の変形と表面波の伝播に関しては,変形から生体リズムを計測した例を示し,2次元像から3次元物体上の運動速度を算出する方法を示す.これらの例を通して,生体運動のディジタル解析における現状と今後について考える.
著者
長谷川 聡 長谷川 昌広
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-99, 2002-04-01 (Released:2019-07-01)

セルオートマトンによる球面上でのシミュレーションを目的に,球面にセルを配置する方法について検討し,実際に,メダカ初期発生卵の律動性収縮運動のシミュレーションに応用した.セルオートマトンによるシミュレーションの実現には,セルをできるだけ均等に配置することが必要であるが,球面上を均等にセルで覆う方法は単純ではない.ランダムにセルの位置を生成しボロノイ多角形により位置の最適化を図る方法の他,正多面体をもとにして幾何学的に整然とセルを配置する方法を検討した.メダカ卵の実例では,発生段階ごとの卵の極性(細胞の分布部位の偏りや球面上の胚体の位置など)を容易に再現するために幾何学的なセル配置を採用し,表面波の発生源がリズムのペースメーカーとして働くことなどの条件の下に,初期発生の各段階における波面伝搬をモデル化した.このモデルにより,発生が進んだ段階では収縮波が2点で発生し胚体の位置にも影響を受ける複雑な収縮運動の表面波の伝搬を再現することができた.この事例を通して,球面セルオートマトンの実現と応用の可能性について考察する.