著者
森脇 義弘 伊達 康一郎 長谷川 聡 内田 敬二 山本 俊郎 杉山 貢
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1701-1705, 2001-07-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14

キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.
著者
宮垣 さやか 長谷川 聡 梅垣 雄心 中村 雅俊 小林 拓也 田中 浩基 梅原 潤 藤田 康介 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0096, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】胸郭可動域制限は,肋間筋など胸壁に付着する軟部組織の柔軟性低下,呼吸筋の筋力低下,脊柱や肋椎関節の可動性低下などにより生じる。臨床現場においては肋間筋ストレッチングや肋椎関節の運動など,肋骨の動きの改善を目的とした胸郭可動域トレーニングが実施されており,呼吸機能の改善に有用であると報告されている。一方,呼吸時には胸椎も屈伸運動するといわれており,胸椎アライメントが呼吸機能に影響を及ぼすという報告もあるものの,胸椎後弯姿勢の改善を目的とした運動(胸椎伸展運動)が呼吸機能を改善させるという報告は見あたらない。さらには,頚部痛など整形外科疾患患者や脊髄損傷患者において,胸椎可動性の低下が呼吸機能低下に影響するとの報告もあることから,肋骨の動きの改善だけではなく,胸椎の伸展運動が呼吸機能を改善することが予想される。そこで本研究では,胸椎伸展ストレッチング(以下胸椎ストレッチ)が,脊柱アライメント,胸郭拡張性,呼吸機能に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は喫煙歴のない健常男性15名(平均年齢24±3.4歳)とした。胸椎ストレッチ前後に胸椎アライメント,呼吸機能,胸郭拡張差,上部および下部肋間筋・胸部脊柱起立筋の筋弾性率を測定した。胸椎アライメントの測定はSpinal mouse(Index社製)を用い,安静立位での胸椎後弯角度を測定し,胸郭拡張差は腋窩,剣状突起,臍レベルの三箇所で測定した。呼吸機能はAutoSpiro(ミナト医科学社製)を用い,安静立位で対標準肺活量(%VC),一秒量(FEV)を測定した。筋弾性率は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能で測定し,各筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率(kPa)を求めた。上部肋間筋は右側の鎖骨内側1/3から下した垂線上の第2肋間,下部肋間筋は右側の前腋窩線上の第6肋間,胸部脊柱起立筋は第6胸椎棘突起右側方1横指の部位にて,全て安静吸気位で測定した。胸椎ストレッチは,対象者の両肩甲骨下角の位置で背部を横断する方向に株式会社LPN製ストレッチポールハーフカット(以下ハーフポール)を設置し,その上に背臥位となりセラピストが肩関節前方から鉛直方向に3分間抵抗を加えた。統計学的解析は,第2・第6肋間の肋間筋と脊柱起立筋の3筋の弾性率,3箇所での拡張差,%VC,FEVについて,対応のあるt検定を用いて胸椎ストレッチ前後の値を比較した。なお,有意水準は5%とした。【結果】肺機能について,胸椎ストレッチ前後に%VC(前:90.0±10.1%,後:91.3±9.6%)は有意に増加したが,FEVは介入前後で有意な差は認められなかった。筋弾性率について,上部肋間筋(前:18.9±7.5kPa,後:14.7±6.4kPa),下部肋間筋(前:17.6±9.2kPa,後:13.8±7.3kPa),脊柱起立筋(前:18.1±9.9kPa,後:13.1±5.1kPa)は,介入後に有意に低下した。胸郭拡張差について,腋窩レベル(前:5.5±1.8cm,後:6.2±1.9cm),剣状突起レベル(前:6.7±1.9cm,後:7.7±2.0cm)で介入後に有意に増加し,臍レベルでは変化は認めなかった。胸椎後弯角度は,胸椎ストレッチによる変化は認めなかった。【考察】本研究の結果より,胸椎ストレッチは,肺活量を増加させ得ることが示された。胸椎ストレッチにより改善がみられると予想された胸椎アライメントは,介入による変化を認めなかった。一方で,各筋の弾性率の有意な低下から,胸椎ストレッチによって,上部および下部肋間筋,さらに,ハーフポールにより圧迫された脊柱起立筋の柔軟性が向上したことが示された。これにより,腋窩・剣状突起レベルでの胸郭拡張差が増し,上位胸椎部分の胸郭拡張運動が改善したことで肺活量が増加したと考えられる。これまでは主として肋骨の動きに関連の強い肋間筋にアプローチする手技が胸郭可動域トレーニングとして取り上げられ,これらの手技により呼吸機能が改善するという報告がされている。しかし本研究では,胸椎の屈伸運動に着目した胸椎ストレッチによっても上位胸郭可動性が向上し,呼吸機能が改善することが示された。また同時に,肋間筋のみならず,胸郭構成筋として着目されることの少ない,脊柱起立筋の柔軟性も,呼吸機能に関連していることを示唆する結果となった。【理学療法学研究としての意義】本研究では,これまで着目されることの少なかった,呼吸時の胸椎伸展運動を促すようなストレッチによっても胸郭可動性が改善することが示唆され,胸郭の可動性低下を認める拘束性換気障害に対する有用な治療手段の一つとなり得る可能性が示唆された。
著者
中村 雅俊 長谷川 聡 梅原 潤 草野 拳 清水 厳郎 森下 勝行 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0153, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】頸部や肩関節の疾患は労働人口の30%以上が患っている筋骨格系疾患であると報告されている。その中でも,上肢挙上時の僧帽筋上部の過剰な筋収縮や筋緊張の増加は肩甲骨の異常運動を引き起こし,頸部や肩関節の痛みにつながると報告されている。そのため,僧帽筋上部線維の柔軟性を維持・改善することは重要であり,その方法としてストレッチングがあげられる。一般的にストレッチングは筋の作用と反対方向に伸ばすことが重要であると考えられている。僧帽筋上部線維の作用は肩甲骨の拳上・上方回旋と頸部伸展・反対側回旋・同側の側屈であるため,ストレッチング肢位は肩甲骨の拳上・上方回旋を固定した状態で,屈曲・同側回旋・反対側の側屈が有効だと考えられる。僧帽筋上部線維に対するストレッチングの効果を検証した報告は散見されるが,効果的なストレッチング肢位を検討した報告は存在しない。そこで本研究では,筋の伸長量と高い相関関係を示す弾性率を指標に,僧帽筋上部線維の効果的なストレッチング肢位を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は上肢に神経学的及び整形外科的疾患を有さない若年男性16名の非利き手の僧帽筋上部線維とした。先行研究に従って,第7頚椎と肩峰後角の中点で,超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,弾性率を測定した。弾性率測定は各条件2回ずつ行い,その平均値を解析に用いた。弾性率は筋の伸張の程度と高い相関関係を示すことが報告されており,弾性率が高いほど,筋は伸張されていることを意味している。測定肢位は,座位にて肩甲骨の挙上・上方回旋を徒手にて固定した状態で対象者が痛みを訴えることなく最大限耐えうる角度まで他動的に頸部を屈曲,側屈,屈曲+側屈,側屈+同側回旋,屈曲+側屈+同側回旋を行う5肢位に,安静状態である頸部正中位を加えた計6肢位とし,計測は無作為な順で行われた。統計学的検定は,頸部正中位と比較してストレッチングが出来ている肢位を明らかにするため,頸部正中位に対する各肢位の弾性率の比較をBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。また,頸部正中位と比較して有意に高値を示した肢位間の比較もBonferroni補正における対応のあるt検定を用いて比較した。【結果】頸部正中位に対する各肢位の比較を行った結果,全ての肢位で有意に高値を示した。また有意差が認められた肢位間での比較では,屈曲に対し,その他の全ての肢位で有意に高値を示したが,その他には有意な差は認められなかった。【結論】肩甲骨の挙上・上方回旋を固定した状態で頸部を屈曲することで僧帽筋上部線維をストレッチング出来るが,屈曲よりも側屈する方が効果的にストレッチングすることが可能であった。また,側屈に屈曲や同側回旋を加えても僧帽筋上部線維をさらに効果的にストレッチング出来ないことが明らかになった。
著者
清水 厳郎 長谷川 聡 本村 芳樹 梅原 潤 中村 雅俊 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0363, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】肩関節の運動において回旋筋腱板の担う役割は重要である。回旋筋腱板の中でも肩の拘縮や変形性肩関節症の症例においては,肩甲下筋の柔軟性が問題となると報告されている。肩甲下筋のストレッチ方法については下垂位での外旋や最大挙上位での外旋などが推奨されているが,これは運動学や解剖学的な知見を基にしたものである。Murakiらは唯一,肩甲下筋のストレッチについての定量的な検証を行い,肩甲下筋の下部線維は肩甲骨面挙上,屈曲,外転,水平外転位からの外旋によって有意に伸張されたと報告している。しかしこれは新鮮遺体を用いた研究であり,生体を用いて定量的に検証した報告はない。そこで本研究では,せん断波エラストグラフィー機能を用いて生体における効果的な肩甲下筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は健常成人男性20名(平均年齢25.2±4.3歳)とし,対象筋は非利き手側の肩甲下筋とした。肩甲下筋の伸張の程度を示す弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,肩甲下筋の停止部に設定した関心領域にて求めた。測定誤差を最小化できるように,測定箇所を小結節部に統一し,3回の計測の平均値を算出した(ICC[1,3]:0.97~0.99)。弾性率は伸張の程度を示す指標で,弾性率の変化は高値を示すほど筋が伸張されていることを意味する測定肢位は下垂位(rest),下垂位外旋位(1st-ER),伸展位(Ext),水平外転位(Hab),90°外転位からの外旋位(2nd-ER)の5肢位における最終域とした。さらに,ExtとHabに対しては肩甲骨固定と外旋の有無の影響を調べるために肩甲骨固定(固定)・固定最終域での固定解除(解除)と外旋の条件を追加した。統計学的検定は,restに対する1st-ER,Ext,Hab,2nd-ERにBonferroni法で補正したt検定を行い,有意差が出た肢位に対してBonferroniの多重比較検定を行った。さらに伸展,水平外転に対して最終域,固定,解除の3条件にBonferroniの多重比較検定を,外旋の有無にt検定を行い,有意水準は5%とした。【結果】5肢位それぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はrestが64.7±9.1,1st-ERが84.9±21.4,Extが87.6±26.6,Habが95.0±35.6,2nd-ERが87.5±24.3であった。restに対し他の4肢位で弾性率が有意に高値を示し,多重比較の結果,それらの肢位間には有意な差は認めなかった。また,伸展,水平外転ともに固定は解除と比較して有意に高値を示したが,最終域と固定では有意な差を認めなかった。さらに,伸展・水平外転ともに外旋の有無で差を認めなかった。【結論】肩甲下筋のストレッチ方法としてこれまで報告されていた水平外転からの外旋や下垂位での外旋に加えて伸展や水平外転が効果的であり,さらに伸展と水平外転位においては肩甲骨を固定することでより小さい関節運動でストレッチ可能であることが示された。
著者
長谷川 聡 長谷川 昌広 下 理恵子 御橋 廣眞
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.93-101, 2001-04-01 (Released:2019-07-01)

ビデオ顕微鏡法によって捕らえた生体運動の様子を,ディジタル動画像解析によってコンピュータ解析し,対象物の運動速度や変形に関するパラメータを抽出する方法について,具体例を挙げて示し,その得失を議論する.具体例としては,「シャジクモ・ミオシン顆粒の運動性の解析」「in vitro滑り運動系でのアクチンフィラメントの運動解析」「メダカ初期発生卵の律動性収縮運動の解析」を挙げるが,これらは,運動する生体材料の形状と運動の性質により,それぞれ,「重心点の運動」「ひも状物体の長軸方向滑り運動と変形」「球体の変形と表面波の伝播運動」の例と見ることができる.重心点の運動に関しては,運動性を表すパラメータとして,速度ベクトルの他に持続性(persistence)などを紹介し,時間積算した画像から熱ゆらぎ運動と方向性のある運動との区別を行った例を示す.ひも状物体の2次元滑り運動と変形に関しては,重心点の運動にはない問題点として,速度と変形の計測に関する相補性(complementarity)を指摘する.また,球体の変形と表面波の伝播に関しては,変形から生体リズムを計測した例を示し,2次元像から3次元物体上の運動速度を算出する方法を示す.これらの例を通して,生体運動のディジタル解析における現状と今後について考える.
著者
西下 智 長谷川 聡 中村 雅俊 梅垣 雄心 小林 拓也 藤田 康介 田中 浩基 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0428, 2014 (Released:2014-05-09)

【目的】肩関節は自由度が高く運動範囲が広いが,関節面が小さいため回旋筋腱板(腱板)の担う役割は重要である。肩関節周囲炎,投球障害肩などに発生する腱板機能不全では棘上筋,棘下筋の柔軟性低下が問題となることが多く,日常生活に影響を及ぼすこともある。柔軟性向上にはストレッチング(ストレッチ)が効果的だが,特定の筋の効果的なストレッチについての研究は少ない。棘下筋に関しては即時効果を検証するような介入研究もされているが,棘上筋ではほとんど見当たらない。棘上筋の効果的なストレッチは,複数の書籍では解剖学や運動学の知見をもとに,胸郭背面での内転(水平外転)位や伸展位での内旋位などが推奨されているが定量的な検証がなされていない為,統一した見解は得られていないのが現状である。Murakiらは唯一棘上筋のストレッチについての定量的な検証を行い最大伸展位での水平外転位が効果的なストレッチであるとしているが,これは新鮮遺体の上肢帯を用いた研究であり,臨床応用を考えると生体での検証が必要である。これまで生体における個別のストレッチ方法を確立できなかった理由の一つに,個別の筋の伸張の程度を定量的に評価する方法が無かったことが挙げられる。近年開発された超音波診断装置のせん断波エラストグラフィー機能を用いることで,計測した筋の伸張の程度の指標となる弾性率を求める事が可能になった。そこで今回我々はせん断波エラストグラフィー機能によって計測される弾性率を指標に,効果的な棘上筋のストレッチ方法を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者は健常成人男性15名(平均年齢23.4±3.1歳)とし,対象筋は非利き手側の棘上筋とした。棘上筋の弾性率の計測は超音波診断装置(SuperSonic Imagine社製)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,棘上筋の筋腹に設定した関心領域の弾性率を求めた。計測誤差を最小化出来るように,計測箇所を肩甲棘中央の位置で統一し,2回の計測の平均値を算出した。弾性率は伸張の程度を表す指標で,弾性率の変化は高値を示す程筋が伸張されていることを意味する。計測肢位は,下垂位(1st),90°外転位(2nd),90°屈曲位(3rd),最大水平内転位(90Had),45°挙上での最大水平内転位(45Had),胸郭背面での最大水平外転位(20Hab),45°挙上での最大水平外転位(45Hab),最大水平外転位(90Hab),最大伸展位(Ext)のそれぞれの肢位にて被験者が疼痛を訴える直前まで他動的に最大内旋運動を行った9肢位に,更に安静下垂位(Rest)を加えた計10肢位とした。統計学的検定は,各肢位の棘上筋の弾性率について一元配置分散分析および多重比較検定を行い,有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言を順守し,所属機関の倫理委員会の承認(承認番号E-1162)を得て行った。対象者には紙面および口頭にて研究の趣旨を説明し,同意を得た。【結果】全10肢位のそれぞれの弾性率(平均±標準偏差,単位:kPa)はRestが26.2±10.9,1stが21.2±8.0,2ndが37.0±13.7,3rdが28.3±11.2,90Hadが29.3±9.5,45Hadが37.1±16.7,20Habが34.0±13.1,45Habが83.3±35.4,90Habが86.0±34.1,Extが95.7±27.6であった。統計学的にはRest,1st,2nd,3rd,90Had,45Had,20Habに対して45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値を示した。Rest,1st,2nd,3rd,90Had,45Had,20Habそれぞれの肢位間では,1stと2ndとの間にのみ有意差が見られ,その他は有意差が無かった。45Hab,90Hab,Extそれぞれの肢位間には有意な差は無かった。【考察】棘上筋のストレッチ方法は,Restに対して弾性率が有意に高値を示した45Hab,90Hab,Extの3肢位が有効であることが示され,有効な3肢位は全て伸展領域の肢位であった。しかしながら,同様に伸展領域の肢位である20Habには有意差は認められなかった。全肢位中,45Hab,90Hab,Extの弾性率が有意に高値で,かつ,20Habに有意差が見られなったことから考えると,棘上筋のストレッチ方法はより大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋が効果的であることが明らかとなった。この結果は新鮮遺体での先行研究を支持するものであった。しかし書籍などで推奨されていた胸郭背面での水平外転位のストレッチについては水平外転よりもむしろ伸展を強調すべきであることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】これまで新鮮遺体でしか定量的な検証が行えていなかった棘上筋のストレッチ方法について,本研究では弾性率という指標を用いる事で,生体の肩関節において効果的な棘上筋のストレッチ方法が検証できた。その運動方向は,より大きな伸展角度での水平外転・内旋もしくは,最大伸展位での内旋であることが明らかとなった。
著者
梅原 潤 長谷川 聡 中村 雅俊 西下 智 草野 拳 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0374, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】上肢運動は肩甲骨,上腕骨,鎖骨などからなる複雑な運動であり,これらの協調的な運動の破綻は,肩関節障害に関連すると考えられている。その中でも,肩甲骨異常運動は肩関節疾患に頻繁にみられ,理学療法の治療対象となることが多い。肩甲骨周囲軟部組織の柔軟性低下,特に小胸筋の短縮は肩甲骨異常運動に関係すると報告されており,我々はこれまでに小胸筋の効果的なストレッチング方法及びその効果を調べてきた。そこでこれまでの研究を元に,ストレッチングによる小胸筋の即時的な柔軟性の変化が肩甲骨運動に与える影響を検討することを本研究の目的とした。【方法】対象は,健常成人男性20名(25±3.2歳)の非利き手側の上肢とした。実験手順は動作課題,5分間休息,動作課題,ストレッチング,動作課題の順とした。各動作課題は,座位での肩甲骨面挙上,外転,結髪動作をランダムに実施した。磁気センサー式三次元動作計測装置(3SPACE-LIBERTY,Polhemus社製)を用いて,肩甲骨面挙上と外転においては胸郭に対する上腕骨挙上30°~120°の範囲,結髪動作においては30°~100°の範囲で10°ごとに肩甲骨外旋角度,上方回旋角度,後傾角度を計測した。ストレッチングによる変化を調べるため,各肩甲骨運動のストレッチング前の動作課題変化量(ΔPre)とストレッチング前後の動作課題変化量(ΔPost)を算出した。小胸筋のストレッチングは,安静座位にて肩関節150°外転位から他動的に最大水平外転,最大外旋を行う方法を5分間(30秒×10回)実施した。超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能(SuperSonic Imagine社製)を用いて,ストレッチング前後に小胸筋の弾性率を計測した。なお,弾性率は低値な程,柔軟性が向上したことを示す。計測姿勢は肩関節90°外転位で上腕を台に置いた安静座位とし,計測部位は烏口突起と第4肋骨の中点で小胸筋の外側部とした。統計学的検定は,肩甲骨運動の変化量について反復測定二元配置分散分析および対応のあるt検定,小胸筋の弾性率について対応のあるt検定を用いた。なお,統計学的有意水準は5%とした。【結果】ストレッチング後に小胸筋の柔軟性向上が認められた。肩甲骨運動の変化量については,肩甲骨面挙上では上腕骨挙上40°~120°の肩甲骨外旋角度と60~120°の後傾角度,外転では30~120°の外旋角度と後傾角度,結髪動作では60~120°の後傾角度において,ΔPostはΔPreと比較して有意に増加した。【結論】ストレッチングによる小胸筋の即時的な柔軟性の向上は,動作課題中の肩甲骨運動を変化させることが示された。小胸筋のストレッチング後に増加した肩甲骨の外旋と後傾は上肢運動に重要であり,本研究結果は,肩甲骨異常運動の治療戦略におけるストレッチングの有用性を示す一助となると考える。
著者
長谷川 聡 市橋 則明 松村 葵 宮坂 淳介 伊藤 太祐 吉岡 佑二 新井 隆三 柿木 良介
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.86-87, 2014-04-20 (Released:2017-06-28)

本研究では健常者と肩関節拘縮症例における上肢拳上時の肩甲帯の運動パターンとリハビリテーションによる変化を検証した。健常肩においては,多少のばらつきはみられるものの,肩甲骨の運動パターン,肩甲骨周囲筋の筋活動パターンは一定の傾向が得られた。上肢拳上30°〜120°の区間では,肩甲骨の上方回旋運動はほぼ直線的な角度増大を示すことがわかった。そのスムーズな角度変化を導くためには,僧帽筋上部,僧帽筋下部,前鋸筋の筋活動量のバランスが必要で,上肢拳上初期から約110°付近までは3筋がパラレルに活動量を増加させ,拳上終盤においては僧帽筋上部の活動量増加が止まり,僧帽筋下部と前鋸筋の活動量を増加させる必要があることが明らかとなった。肩関節拘縮症例では,上肢拳上による肩甲骨の運動パターンは多様であり,一定の傾向はみられなかったため,代表的な症例の経過を示した。
著者
佐伯 純弥 長谷川 聡 中村 雅俊 中尾 彩佳 庄司 真 藤田 康介 簗瀬 康 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1293, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】陸上競技者において再発を繰り返すスポーツ障害の一つに,ランニングによって脛骨後内側縁に疼痛を生じる,シンスプリントがある。発症の原因として,下腿の筋の伸張ストレスの関与が疑われており,下腿の筋硬度が発症に影響を与える可能性があるが,どの組織が発症に関係するか一致した見解が得られていない。そのため,より効果的なシンスプリントの予防および治療法を確立させるためには,シンスプリントと下腿各筋の筋硬度の関係を検討し,どの筋が発症に関与するのかを明らかにする必要がある。しかしながら,シンスプリントに罹患している脚の筋硬度は疼痛による筋スパズムの影響を受ける可能性があるため,これらの関係を横断的に検討するためには,既往の有無での比較が必要である。そこで今回,筋硬度を表す指標として,せん断波エラストグラフィーを用いて下腿各筋の弾性率を算出し,シンスプリント既往脚と非既往脚で比較することで,シンスプリントと関連する筋を明らかにし,再発予防プログラム立案の一助とすることを目的とした。【方法】大学男子陸上中・長距離選手14名28脚(シンスプリント両側既往者6名,片側既往者1名,非既往者7名)を対象とした。対象者の群分けにおいて,片側既往者の既往脚を既往群,非既往脚を非既往群にそれぞれ分類したところ,シンスプリント既往群13脚,非既往群15脚であった。なお,本研究におけるシンスプリント既往の基準は,①過去にランニングによって脛骨内側が痛んだことがある,②その際に圧痛があった,③痛みの範囲が5 cm以上あった,④医師から疲労骨折の診断を受けなかった,⑤現在下腿に痛みがないこととした。筋弾性率の測定には超音波診断装置(Supersonic Imagine社)のせん断波エラストグラフィー機能を用い,腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭,ヒラメ筋,腓骨筋群,前脛骨筋,長母趾屈筋,長趾屈筋,および後脛骨筋の弾性率を測定した。測定肢位は非荷重位,足関節底背屈中間位とした。統計解析には対応のないt検定を用い,各筋の弾性率を2群間で比較した。【結果】シンスプリント既往群は非既往群と比較して,後脛骨筋の弾性率が有意に高値を示した。他の筋においては両群で有意差が認められなかった。【結論】大学陸上中・長距離選手のシンスプリント既往脚では,非既往脚と比較して,後脛骨筋の筋硬度が高いことが明らかとなった。本結果から,後脛骨筋の柔軟性を獲得し,運動による下腿の筋膜および骨膜への伸張ストレスを軽減することでシンスプリントの予防に繋がることが示唆された。
著者
森脇 義弘 伊達 康一郎 長谷川 聡 内田 敬二 山本 俊郎 杉山 貢
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.1701-1705, 2001

キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.
著者
長谷川 聡 佐久間 淳
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

ネットワーク構造を持つデータには,ネットワーク内ノード同士のリンク以外に,異なるネットワークに属するノード同士のリンクがあり,このリンクの予測は重要なタスクである.このリンクを予測する手法として,ペアワイズ類似度を用いたリンク予測法が提案されている.本論文では,既存のペアワイズ類似度では用いていない,異種ネットワーク間リンクを用いた新たなペアワイズ類似度を提案し,予測精度を比較し良好な結果を得た
著者
菊池 馨実 福島 豪 中川 純 上山 泰 菅 冨美枝 小西 啓文 尾形 健 川島 聡 今川 奈緒 永野 仁美 新田 秀樹 長谷川 珠子 長谷川 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

研究者各自による研究論文の発表に加えて、4度にわたる公開シンポジウムの開催、3度に及ぶ学術雑誌での特集論文の掲載、さらに刊行が確定している論文集と教科書の出版などを通じて、日本における障害者法学の構築に向けた基盤をつくることができた。
著者
長谷川 聡 長谷川 昌広
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-99, 2002-04-01 (Released:2019-07-01)

セルオートマトンによる球面上でのシミュレーションを目的に,球面にセルを配置する方法について検討し,実際に,メダカ初期発生卵の律動性収縮運動のシミュレーションに応用した.セルオートマトンによるシミュレーションの実現には,セルをできるだけ均等に配置することが必要であるが,球面上を均等にセルで覆う方法は単純ではない.ランダムにセルの位置を生成しボロノイ多角形により位置の最適化を図る方法の他,正多面体をもとにして幾何学的に整然とセルを配置する方法を検討した.メダカ卵の実例では,発生段階ごとの卵の極性(細胞の分布部位の偏りや球面上の胚体の位置など)を容易に再現するために幾何学的なセル配置を採用し,表面波の発生源がリズムのペースメーカーとして働くことなどの条件の下に,初期発生の各段階における波面伝搬をモデル化した.このモデルにより,発生が進んだ段階では収縮波が2点で発生し胚体の位置にも影響を受ける複雑な収縮運動の表面波の伝搬を再現することができた.この事例を通して,球面セルオートマトンの実現と応用の可能性について考察する.
著者
長谷川 聡 杉本 直也 成岡 浩二 長澤 可也
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第72回, no.インタフェース, pp.397-398, 2010-03-08
著者
長谷川 聡 泉 朋子 仲谷 善雄
雑誌
第77回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, no.1, pp.627-628, 2015-03-17

義務教育においてダンスが必修化され、その中でも現代リズムダンスとしてHIPHOPやLOCKダンスに注目が集まっている。しかし、教育の現場では教える立場である教師のほとんどがダンスの未経験者であるという問題が発生している。そこで本研究では、教師どうしで互いに教え合うピアエデュケーションの場を支援するシステムを提案する。本システムでは、2人のユーザが評価者と学習者のいずれかの役割を担い、評価者が学習者の動作と熟練者の映像を比較し、システムが提示するアドバイスやヒントを参考にしながら、学習者にダンスの指導を行う。これにより学習者はダンス技術が向上し、評価者はダンスを教える技術が向上することを目指す。
著者
長谷川 聡 安井 明代 山口 宗芳
出版者
学校法人滝川学園 名古屋文理大学
雑誌
名古屋文理大学紀要 (ISSN:13461982)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.51-58, 2013-03-31 (Released:2019-07-01)

SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の教育利用の可能性とソーシャルラーニングシステムの教育効果について名古屋文理大学における実践を通して述べる.SNS は iPad を使った講義や講演で講師と学生間のコミュニケーションに利用した.また,ソーシャルラーニングシステムは,モバイルシステム開発の授業で利用したもので,パソコン上で電子教科書にコメントを書きこむものである.コメントは,ネットワークを介して,教員,SA(学生アシスタント),授業の受講者だけでなく卒業生などからも書き込まれて共有された.本論文では,SNS やソーシャルラーニングシステムが大学教育でどのように利用されたかを紹介する.