著者
長谷川 祐司 竹内 勇剛
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3692-3702, 2007-12-15
被引用文献数
2

本研究では,ユビキタス・コンピューティング技術の発展にともなって増加することが予想される,物理的ないし時間的に制約のある公共空間での情報提供場面において,情報を個別化して提供することによってユーザの行動や態度を促進・抑制させるような情報提供手法を提案することを目的としている.本稿では,情報の効率的利用として従来から広く研究されてきた情報の個人化に対する概念として情報の個別化について述べ,情報が個別化されていることをユーザが認知するための要因について言及した.特に,提供されたコンテンツが個別化されているか否か,そのコンテンツを他者と共有できる状況にあるか否かの2 要因に着目し,ユーザの認知と行動にどのような影響を与えているかを観察するための実験室実験を行った.その結果,コンテンツを個別化することの有用性が示されたとともに,提供された情報を他者と共有することのできる環境で受け取ることによってさらにその効果が高まる可能性が示唆された.さらに実験室実験で得られた知見に基づいて実地実験を行い,その結果が現実社会においても十分な有効性を示すことを明らかにした.本研究において得られた知見から,情報の個人化という従来の視点に対し,人間の社会的認知傾向を考慮した情報の個別化という側面からの検討が,公共空間における個人間の差異を吸収した適切な情報伝達の実現に寄与することが期待される.In this psychological research we present an effective approach to convey individualized information in various real community spaces, which this research concerns ubiquitous information dissemination. We study the natural reception of information within the ubiquitous computing environment and consider the problem of conveying individualized information through psychological experiment. The experiments was conducted in the laboratory to observe the influence of information on experimental participants' acknowledgment and action. The result indicated the possibility that the contents were more effectively conveyed in populous circumstances. Moreover, we conducted the experiment on real location. The findings of this experiment indicated similar effectiveness to the result verified in laboratory, which suggests that the approach of this study to convey individualized information to each person is useful in public space.