著者
田中 洋太郎 勝山 正則 長野 龍平 鷹木 香菜 谷 誠
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.125, 2014

滋賀県南部の桐生試験地において、鉛直及び横方向の地中水移動過程における溶存有機態炭素の動態解明を目的に、土壌水、地下水、渓流水を採取し、三次元蛍光分析を行った。検出されたピークは、難分解性フルボ酸様物質(A)、易分解性フルボ酸様物質(C)、変質性フルボ酸様物質(M)、アミノ酸様物質(T)であった(Wu et al., 2009)。土壌水のフルボ酸様物質の蛍光強度は表層0-20cmの鉛直浸透過程で分解・吸着によって急低下した。下層では蛍光強度が表層に比べ緩やかに低下するとともに、ピークM,Tが複数回確認された。地下水帯表層でも強度の低下が継続した。しかし、地下水帯下層では再び蛍光強度が上昇し、ピークC,Mが下層土壌層 と同程度の強度になった。Katsuyama et al. (2005)は、地下水帯下層が斜面部で基岩に浸透した地下水によって涵養されることを示したが、本結果はこの水が土層の蛍光特性を保持したまま移動することを示唆する。飽和帯地下水帯での横方向移動から渓流流出に至る過程では蛍光強度の変動は小さかった。以上から、DOC蛍光特性は地下水帯に至るまでに概ね決まるとともに、渓流へのDOC供給源を考える場合、地下水帯の層位に着目した質の評価が必要である。