- 著者
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菱田 瞳
安藤 真美
門上 剛
白坂 直輝
北尾 悟
- 出版者
- 日本調理科学会
- 雑誌
- 日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.37, 2012 (Released:2012-09-25)
【目的】ホスホリパーゼA2(PLA2)は、卵黄に多く含まれるレシチンなどグリセロリン脂質のグリセロール2位のエステル結合を加水分解し、遊離脂肪酸とリゾリン脂質を生成させ、耐熱安定性、乳化性および起泡性の改善などが期待できる。先に検討したカスタードクリームでは、酵素処理卵黄を使用した場合、冷凍耐性の向上などの利点が明らかとなったが、遊離脂肪酸の影響による苦味が残るため官能評価では必ずしも好まれる結果が得られなかった。今回は、苦味による影響を低くするために高温で焼成するスポンジケーキを対象に、酵素処理の有無による比較検討を行った。【方法】Streptomyces属起源の食品添加物として認可を受けたPLA2を使用した。無改質、分解率50%、分解率80%の3種類の卵黄を用いて170℃、25分の条件で作製したスポンジケーキを測定試料とした。さらに生地を調製後1週間冷凍し焼成(以下A)、および卵黄のみを1週間冷凍し解凍後生地調製・焼成(以下B)した場合も検討した。焼成後、高さや比容積などを測定し、物性測定はクリープメーターを用いた。官能検査は評点法にて実施した。【結果】酵素処理卵黄を用いた場合、分解率に関わらず高さおよび比容積が有意に高く破断エネルギーは有意に低かった。官能検査では、「苦味」は無処理卵黄を用いた場合と差がなく、かつ分解率が上がるほど有意に「甘く」感じられることが認められた。A条件でも同様の結果が得られたが、B条件では高さおよび比容積以外有意差は認められなかった。以上の結果からPLA2処理卵黄を用いたスポンジケーキは、生地を冷凍保存してもボリュームアップ効果や食感・食味の向上が期待できると考えられた。