著者
田中 早津紀 前田 康司 奥田 譲治 門田 一郎 西村 治男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.747-752, 2002-10-30
参考文献数
20

症例は64歳, 14年来の糖尿病の男性, 1999年 (平成11年) 11月, 血糖コントロール目的で当科入院.入院時, gllbenclamide2.5mg, voglibose0.6mgにて空腹時血糖182mg/d<I>l</I>, HbA<SUB>1</SUB>c8.1%と血糖コントロール不良であり, 空腹時IRI6.9μU/m<I>l</I>, 尿中CPR90μg/day, 抗GAD抗体陰性, 抗インスリン抗体陰性であった, 高身長, 肥満, 女性化乳房を認め内分泌学的に原発性性腺機能低下症を認めた.染色体検査で47XXYの核型を認めKiinefelter症候群と確定診断した.血糖コントロールのため経口血糖降下薬からインスリン強化療法へ切り替えたが, 合計46単位/日と大量のインスリンを要しインスリン抵抗性が示唆された.血糖コントロールが良好になってから施行したグルコースクランプ法でMCR (Metabolic clearance rateof glucose) 1.0ml/kg/minと著しいインスリン抵抗性を確認した.2000年 (平成12年) 1月よりtroglitazone200mgを開始 (途中pioglitazone 30mgへ変更) したところ効果を示しインスリンが不要となった.2001年 (平成13年) 4月現在gliclazide 120mg, piogiitazone30mgでHbA<SUB>1</SUB>c6.1%と血糖コントロール良好である.<BR>Klinefelter症候群は, 原発性性腺機能低下症を呈する染色体異常で, 高率に糖尿病を合併する.糖尿病の成因は不明であるが, インスリン抵抗性が主体と考えられている, 今回の報告は, Kiinefelter症候群におけるインスリン抵抗性をグルコースクランプ法で確認したはじめてのものであり, チアゾリジン誘導体が効果を示したことと併せて報告する.