- 著者
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秋山 雅博
関 夏美
熊谷 嘉人
金 倫基
- 出版者
- 日本毒性学会
- 雑誌
- 日本毒性学会学術年会 第48回日本毒性学会学術年会
- 巻号頁・発行日
- pp.P-13, 2021 (Released:2021-08-12)
【目的】腸内細菌叢は食事や薬剤などの環境因子によって容易に変化し得る。我々は食事を介してメチル水銀(MeHg)を一定量摂取しており、それらが腸内細菌に影響を与える可能性は高い。一方で、腸管には硫酸還元菌が常在し硫化水素 (H2S)などのイオウを産生していることから、イオウ付加体形成を介したMeHgの不活性化に寄与している可能性が高い。そこで、MeHgによる腸内細菌への影響と、MeHgの毒性軽減作用に対する腸内細菌叢の役割を検証した。【方法】腸内細菌タンパク質中チオール(SH)基はBPMアッセイにて検出した。Lactobacillus属菌の増殖は好気条件下37℃で24時間培養し1時間ごとに600 nmの吸光度を測定することで検出した。H2SおよびH2S2はLC-ESI-MS/MSにより測定した。C57BL/6マウス臓器中の水銀濃度測定に際し、抗生剤を14日間飲水投与後、MeHgを経口投与した。臓器中の水銀濃度は原子吸光水銀検出器を用いて測定した。【結果】まず、腸内細菌由来のタンパク質がS-水銀化されるかを調べた。その結果、マウス糞便タンパク質中でBPMにより検出されたSH基はMeHg曝露濃度依存的に減少した。 次に、MeHgが腸内細菌の増殖に与える影響を検証するために、小腸から大腸まで幅広く存在する乳酸菌であるLactobacillus属菌を用い、MeHgを添加した培地で培養した。その結果、非添加培地で培養した場合と比べて、MeHgを曝露した培地では、MeHgの濃度依存的な増殖阻害作用がみられた。また、SPFマウスの糞便中からH2SだけでなくH2S2も検出され、その濃度は無菌マウスで有意に低かった。さらに、抗生剤によって腸内細菌叢を撹乱したマウスでは、MeHg曝露による小脳、肺、肝臓への水銀蓄積が促進された。【考察】本研究よりMeHgは腸内細菌タンパク質へのS-水銀化を介して悪影響を与えている可能性が示唆された。また一方で腸管常在菌により産生されるイオウ化合物がMeHg毒性から宿主を保護している可能性も示唆された。