著者
関口 陽美 牧野 州明 津金 達郎 竹下 欣宏
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.121, 2008 (Released:2009-04-07)

長野県和田峠東方の男女倉地域に分布する流紋岩質溶岩は黒曜石を伴っている.黒曜石には球顆が含まれており,この球顆は主にクリストバライトとアルバイトを主体とし,加えてわずかな輝石やオキサイド,空隙から構成されている.黒曜石の球顆様構造には放射状の球顆と同心層状のリソフィーゼがある.黒曜石中には斑晶やマイクロライトが含まれ流理構造を構成するマイクロライトもある. リソフィーゼは中心付近に気孔を持ち,斑晶,散在するマイクロライトを包含し,流理を構成しているマイクロライトの配列を変形させているが,これらのマイクロライトはリソフィーゼには包含されない.一方,球顆は斑晶,散在するマイクロライト,リソフィーゼのほかに,流理を構成しているマイクロライトの配列を変形させずに包含している. これらのことからリソフィーゼは,斑晶や気孔の表面を核として形成が始まると考えられる.その後,溶岩流中の流理を構成しているマイクロライトが形成され,放射状の球顆が斑晶,リソフィーゼなどを核とし,散在するマイクロライト,流理を構成するマイクロライトを包含しながら未固結部分を連続的に成長し,最終的には薄い外皮が全体を覆う.リソフィーゼと球顆はともに斑晶の隅から成長していることが多く,溶岩流が未固結状態であるときの斑晶によるキャビテーションが球顆とリソフィーゼの成長のきっかけの一つとして考えられる.