著者
竹下 欣宏 桐生 和樹 花井 嘉夫 北澤 夏樹 川上 明宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.291-307, 2017-05-15 (Released:2017-07-25)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

2014年9月27日午前11時52分ごろ,御嶽山で水蒸気噴火が発生した.我々は,この噴火による詳細な降灰範囲を明らかにすることを目的として,長野県,山梨県,群馬県,東京都においてアンケート調査を実施した.アンケート結果と既存の研究による降灰確認地点に基づき降灰域を検討した結果,長野県中南部および山梨県の北西部の広い範囲において9月27日の噴煙から1g/m2以下の微量な降灰があったことが明らかになった.27日の噴煙による微量な降灰域は,降灰軸の南側,特に木曽山脈と赤石山脈に囲まれた南北に長い伊那盆地内において広いことが明らかになった.このことは,微量な降灰域は上空の風だけでなく,地上付近の風と地形にも影響を受けることを示している.微量な降灰域に対する地上付近の風の影響は浅間山や桜島のマグマ噴火でも確認されており,細粒な火山灰が降下する際には普通に起こっているものと考えられ,2014年御嶽山の水蒸気噴火でも確認された.
著者
竹下 欣宏 三宅 康幸 酒井 潤一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.417-433, 2005 (Released:2005-11-01)
参考文献数
60
被引用文献数
7 8 3

古期御岳火山起源のテフラと上総層群中のテフラの対比を角閃石の化学組成値を用いて検討した.その結果,上総層群中の白尾テフラ(BYK)とKs12テフラが古期御岳火山のHサブステージのYUT4もしくは5と溶岩ステージの上浦沢テフラにそれぞれ対比できることが明らかになった.BYKとKs12は内陸地域と海岸地域を結ぶ重要な鍵テフラとなるだけでなく,特にBYKは更新世の前・中期境界の直上に位置するために,中部~関東地方において重要な時間基準面を提供すると考えられる. 上総層群中の9枚のテフラ(Ku6E, Ku5C, BYK, Ka2.4B, Ka2.4A, Ch3, Ch1.5, Ks18, Ks12)に含まれる角閃石の化学組成値はそれぞれ異なることを示した.さらに,黒富士火山,古期御岳火山のテフラも角閃石の組成値により明瞭に区別することができた.それらの結果は,その組成値がテフラの同定,対比の有効な指標になることを示している.
著者
廣内 大助 竹下 欣宏 松多 信尚 杉戸 信彦 藤田 奈津子 石山 達也 安江 健一
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では糸魚川ー静岡構造線活断層帯における過去の活動履歴や活動性について,精密な古地震調査や変動地形調査に基づいて明らかにした.とくに従来の予測よりも一回り小さな地震であった2014年地震の発生を受け,同断層帯がどのような活動を示すのかを調査し,活断層の活動特性を明らかにすることを目指した.その結果2014年と同様の一回り小さな地震が1714年にもあった一方,約1000年前にはこれよりも大きな断層活動を示す巨大地震もあり,同断層はタイプの異なる地震を相補的に発生しながら,繰り返してきたことが明らかとなった.
著者
関口 陽美 牧野 州明 津金 達郎 竹下 欣宏
出版者
一般社団法人日本鉱物科学会
雑誌
日本鉱物科学会年会講演要旨集 日本鉱物科学会2008年年会
巻号頁・発行日
pp.121, 2008 (Released:2009-04-07)

長野県和田峠東方の男女倉地域に分布する流紋岩質溶岩は黒曜石を伴っている.黒曜石には球顆が含まれており,この球顆は主にクリストバライトとアルバイトを主体とし,加えてわずかな輝石やオキサイド,空隙から構成されている.黒曜石の球顆様構造には放射状の球顆と同心層状のリソフィーゼがある.黒曜石中には斑晶やマイクロライトが含まれ流理構造を構成するマイクロライトもある. リソフィーゼは中心付近に気孔を持ち,斑晶,散在するマイクロライトを包含し,流理を構成しているマイクロライトの配列を変形させているが,これらのマイクロライトはリソフィーゼには包含されない.一方,球顆は斑晶,散在するマイクロライト,リソフィーゼのほかに,流理を構成しているマイクロライトの配列を変形させずに包含している. これらのことからリソフィーゼは,斑晶や気孔の表面を核として形成が始まると考えられる.その後,溶岩流中の流理を構成しているマイクロライトが形成され,放射状の球顆が斑晶,リソフィーゼなどを核とし,散在するマイクロライト,流理を構成するマイクロライトを包含しながら未固結部分を連続的に成長し,最終的には薄い外皮が全体を覆う.リソフィーゼと球顆はともに斑晶の隅から成長していることが多く,溶岩流が未固結状態であるときの斑晶によるキャビテーションが球顆とリソフィーゼの成長のきっかけの一つとして考えられる.
著者
竹下 欣宏
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.158-174, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
31
被引用文献数
12 8

古期御岳火山の降下テフラおよび火砕流堆積物を記載し, 降下テフラの重鉱物組み合わせ, 重鉱物の主成分化学組成を明らかにした. 降下テフラの記載岩石学的特徴と年代値の明らかな溶岩層およびテフラ鍵層との層序関係に基づき, 古期御岳火山の詳細なテフラ層序を確立した. テフラの層序および重鉱物組み合わせに基づき, 古期御岳火山テフラステージを下位より, Hサブステージ (主に緑色角閃石を多く含む降下テフラを噴出する活動が盛んな時期 ; 約0.78 Ma以前), PHサブステージ (主に褐色角閃石, 斜方輝石, 単斜輝石を含むテフラを噴出する活動が盛んな時期 ; 約0.78-0.70 Ma), OPサブステージ (主にかんらん石, 単斜輝石, 斜方輝石を含むテフラを噴出する活動が盛んな時期;約0.70-0.64 Ma) に区分した. この区分は, 古期御岳火山の山麓全域において年代値の明らかな溶岩層やテフラ鍵層との層序関係と矛盾なく確認された.
著者
三宅 康幸 齋藤 美由紀 竹下 欣宏 及川 輝樹 齋藤 武士
出版者
特定非営利活動法人 日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.163-173, 2009-08-31 (Released:2017-03-20)
参考文献数
29
被引用文献数
1

Nantai Volcano is a symmetrical stratovolcano, situated in the southern part of the Northeast Japan arc. Many geologic studies hitherto have suggested that the stratovolcano was formed during the Main stage, and the overlying pyroclastic materials and a lava flow were formed in the Later stage. Because no sedimentary gap is found between any deposits of the Later stage, it is inferred that all of the activity in the Later stage took place successively around 12ky BP (15-14 cal ka BP) and went dormant until now. However, we found a pyroclastic flow deposit named Bentengawara Pyroclastic Flow Deposit (BPFD) at the northeastern flank of the Nantai volcano about 2km from the summit crater. This deposit overlies an 80cm thick deposit of weathered ashy sediments that in turn overlies the Arasawa Pumice Flow Deposit, a member of the Later stage. The lower half of the BPFD consists of volcanic lapilli and ash that is remarkably fine-depleted while the upper half contains abundant scoria of mainly lapilli-block sized clasts. The deposit also includes a small number of breadcrust blocks and occasional accessory lava blocks and fragments of charred wood. The breadcrust blocks consist of a dense outer crust that is significantly fractured and a vesiculated interior. It is noteworthy that the edges of the cracks are sharp and never rounded, suggesting that the vaporization of the inner magma that produced these cracks took place just before or immediately following the settlement of the blocks. Paleomagnetic data from three breadcrust block samples indicate that the magnetic vectors of high temperature components are aligned with our present-day poles. Two pieces of charred wood were measured for their 14C ages with results of 12-11 cal ka BP. The whole rock chemistry of scoria and breadcrust blocks are determined to be significantly different from any of the rocks of the Later stage, but the accessory block in the BPFD has the similar chemistry to the Osawa Lava, the last product of the Later stage. We therefore suggest that the BPFD was deposited after the Later stage with a short (~3ka) dormant period between them. Since the age is possibly around 10ka, the Nantai volcano should be counted as active volcano based on the definition provided by the Meteorological Agency of Japan.
著者
西来 邦章 竹下 欣宏 田辺 智隆 松本 哲一
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.120, no.3, pp.89-103, 2014-03-15 (Released:2014-07-26)
参考文献数
28
被引用文献数
1

四阿火山において地質調査,K-Ar年代測定および全岩化学組成分析を行い,火山活動史の再検討を行った.本火山は噴出物の分布と地形の開析の程度差,活動年代および全岩化学組成から,3つの火山体(初期火山体,根子岳火山体,浦倉山火山体)からなる.本火山の活動は,約80万年前に開始した(初期火山体の活動).約70万年前には,根子岳周辺でデイサイトの火山活動が発生し(根子岳火山体の活動),数万年間で山体が形成された.初期火山体は約55万年前まで活動が継続したのち,5万年程度の活動休止期を挟み,約50万年前には,浦倉山周辺で安山岩の火山活動が発生した(浦倉山火山体の活動).この火山体の活動は約45万年前には終息した.そして,約30万年前には,四阿火山の北西方において小規模な火山体(鳴岩火山)が形成された.
著者
竹下 欣宏 三宅 康幸 酒井 潤一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.417-433, 2005-07-15
被引用文献数
3 8

古期御岳火山起源のテフラと上総層群中のテフラの対比を角閃石の化学組成値を用いて検討した.その結果, 上総層群中の白尾テフラ(BYK)とKs12テフラが古期御岳火山のHサブステージのYUT4もしくは5と溶岩ステージの上浦沢テフラにそれぞれ対比できることが明らかになった.BYKとKs12は内陸地域と海岸地域を結ぶ重要な鍵テフラとなるだけでなく, 特にBYKは更新世の前・中期境界の直上に位置するために, 中部〜関東地方において重要な時間基準面を提供すると考えられる.上総層群中の9枚のテフラ(Ku6E, Ku5C, BYK, Ka2.4B, Ka2.4A, Ch3, Ch1.5, Ks18, Ks12)に含まれる角閃石の化学組成値はそれぞれ異なることを示した.さらに, 黒富士火山, 古期御岳火山のテフラも角閃石の組成値により明瞭に区別することができた.それらの結果は, その組成値がテフラの同定, 対比の有効な指標になることを示している.