著者
関場 亜利果
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.141-141, 2005

本研究はキネティック・アートの芸術家グループとして知られているグルッポT(グループT)の活動に関する研究の一部である。本稿は最初の展覧会「ミリオラマ1」で提示された,グルッポTおよび彼らの先駆者による宣言・作品について考察し,1960年代イタリアにおけるキネティック・アートの一面を明らかにすることを目的としている。本研究では先行研究・および現存する史資料のみからでは分からない点を,グルッポTメンバーへのインタビューなどから明らかにした。グルッポTの公式グループ展は14回開催されたが,本稿でとりあげた初回展覧会「ミリオラマ1」は,歴史的前衛美術との関わりが最も具体的に示され,彼らの活動の根底にある造形思想が表されている。この展覧会で展示されたグルッポTの作品をみると,動きということが,視覚的にではなくさらに広い身体表現を伴った知覚に関わるものだと最初から理解されていたことが分かる。
著者
関場 亜利果
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.1-10, 2009-09-30
参考文献数
14

本稿の目的は現代キネティック・アートの動向を探る一環として,グルッポTの「ミリオラマ15」を報告する事である。グルッポTはイタリアのキネティック・アートを代表する作家で,彼らの活動「ミリオラマ」は開催順に番号が付けられている。第9回ミリオラマは東京で行われ,我が国に最も早く紹介されたイタリア戦後美術の一つである。今日までグループは正式に解散していないが,事実上1964年の第14回ミリオラマ以降は各メンバー個人の活動が中心となっていた。2008年,グループは長い休止期間を経て通算第15回目のミリオラマを開催した。これは近年の再評価の動向を受け,ヴァルモール美術スタジオが企画・開催したものである。本稿は「ミリオラマ15」について現地調査を行い,作品の特徴や現代におけるキネティック・アートの意義を考察した。その結果,グルッポTの作品と現代美術との共通点を明らかにした。また近年みられる再評価の背景として,インタラクティブ・アートなどのメディア・アートの先駆として注目されている事を確認した。
著者
関場 亜利果
出版者
日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.9-18, 2005-03-31
被引用文献数
1

アルテ・プログランマータ運動はブルーノ・ムナーリが企画し, オリヴェッティ社の支援により開催された1962年の同名の展覧会に始まったとされる。この運動はテクノロジー・アートが急速に発展した時代に, 科学的視点の芸術分野への応用をいち早く試みたという点でイタリアの現代美術において重要である。しかし主な活動舞台であった欧米においても, 同時代の他の類似した運動と混同され正しい評価が与えられていない。また日本においては断片的な紹介がなされているのみであり, 呼称も統一されておらず, 具体的活動内容については殆ど認識されていない。本研究では, この運動の企画者による文章など一次資料や実際の作品からこの芸術運動の特徴を考察し, 運動コンセプトの定義を試みた。また先行研究における誤解や相互の矛盾点の原因を明らかにし, 本論文が日本における初めてのアルテ・プログランマータを包括的に概観できる資料となるよう努めた。その上でこの運動の今日的意義を考察した。
著者
関場 亜利果
巻号頁・発行日
2006

筑波大学博士 (デザイン学) 学位論文・平成18年3月24日授与 (甲第4132号)
著者
関場 亜利果
出版者
筑波学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は美術運動が産業デザインの発展と多様性に寄与した一つの様相を明らかにする事を目的とし,1960年代にイタリアで発祥した美術運動アルテ・プログランマータ(Arte Programmata)を研究対象とした。この美術運動は当時先進的な情報科学技術であった「プログラミング」を芸術へ応用することを試み,ブルーノ・ムナーリ(Bruno Munari)とウンベルト・エーコ(Umberto Eco)が企画した展覧会がヨーロッパとアメリカ各地を巡回,美術史においてキネティック・アートと位置づけられている。2008年度にイタリアとドイツで現地調査を行い,イタリア人作家ブルーノ・ムナーリ,エンツォ-マーリ(Enzo Mari),ジェトゥリオ・アルヴィアー二(Getulio Alviani),グルッポT(Gruppo T),グルッポN(Gruppo N)について資料収集した。2009年度はこれら作家がグラフィック・デザインやプロダクト・デザイン的な作品も制作していく点に注目しその背景と要因について考察した。具体的には,この運動がデザイン文化に力を入れるオリヴェッティ社の支援で始まった事,制作過程で工業生産という手段に関わる事,多くの作家が当時急速に産業都市として発展したミラノに関わりがあった事,作品のコンセプトとして「オブジェ」「マルチプル」というキーワードを掲げ,思想的背景として旧来の芸術への批判精神から「共同研究」「共同制作」を行い,従来の芸術と異なる観客との関係を模索していた事,一人の享受者ではなく大衆へ開かれた作品を目指していたこと等である。また,こうした立場を国際舞台で他芸術家や研究者らと交流・議論し再確認した「新しい傾向」への参加が後の制作姿勢に影響を与える過程を調査した。本研究は,他国のキネティック・アートに見られない特徴,デザインへの展開の過程を考察し,美術史的視点のみにとどまらない文化的側面から再考察した点に意義が有る。