著者
阿久津 美紀
出版者
学習院大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2016-04-22

本研究は、保護者のいない児童、被虐待児など家庭環境上養護を必要とする児童を公的な責任で養育する、「社会的養護」(以下、社会的養護)に関する記録や記録管理システムを日本においていかに成り立たせ、社会的養護で養育された経験をもつケアリーヴァー(care leaver)の記録へのアクセスをいかに促進するかという課題について研究を行うものである。前年度から引き続き、日本国内の社会的養護の施設に保存される資料を整理・分析し、入所児童の傾向を把握すると同時に、国外の社会的養護に関する記録管理の動向についても調査した。特に、海外ではオーストラリアで実施された性的虐待に関する調査から、社会的養護の記録とレコードキーピングの役割について検証するために、オーストラリアアーキビスト協会を中心とした専門職団体の提言について分析を行った。また、メルボルンで開催された、社会的養護で生活する子どもの権利と記録管理についての会議、「Setting the Record Straight: For the Rights of the Child」に参加し、当事者からヒアリングを行った。さらに、社会的養護の選択肢の一つとして近年、日本で関心が高まっている特別養子縁組に関する記録管理についても、民間の養子縁組あっせん機関を訪問し、アンケート調査を実施した。アンケート分析結果やその成果については、今年度刊行された報告書にまとめている。