著者
姫野 泰雄 稲垣 雅男 後藤 剛 阿波 純二 土井 修 松永 和夫 藤野 俊夫 光藤 和明 福田 博司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.17, no.4, pp.408-415, 1985-04-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
20

左冠動脈主幹部に完全閉塞をきたした急性心筋梗塞は非常に重篤であり,発症早期の診断と適切な治療が必須である.われわれが急性心筋梗塞発症早期に冠動脈造影を施行した72症例中,5例に左主幹部完全閉塞を認め,それらの心電図所見に共通した特徴ある所見を認めたため,臨床症状,経過をも含め報告する.いずれもショック状態を呈する著明な心機能の低下をきたし来院したが,心電図上は,I,aVLのST上昇を認めるのみで広範な心筋梗塞を疑わせる所見を欠いていた.全例にintraaortic balloon counterpulsation(IABP)を施行し,5例中4例にpercutaneous transluminal coronary recanalization(PTCR)を,1例にpercutaneous transluminal coronary angioplasty(PTCA)を,そして3例に緊急A-Cバイパス術(coronary arterybypass graft(CABG)を施行したが,4例は心原性ショックなどで死亡した.また,陳旧性心筋梗塞の冠動脈造影では左冠動脈主幹部を責任冠動脈とする例は1例も見られなかった.このように重篤な左主幹部閉塞による急性心筋梗塞に対し早期診断は非常に重要である. 心電図上I, aVLのみのST上昇が高度に認められ,胸部誘導のST上昇があまり高度でなく,特に心機能の低下している場合は左冠動脈主幹部閉塞による急性心筋梗塞を疑い,直ちに積極的な治療が必要と考えられた.