著者
宮上 光祐 星 達也 福岡 宏之 戸原 玄 阿部 仁子
出版者
一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会
雑誌
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 (ISSN:13438441)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.8-18, 2019-04-30 (Released:2019-08-31)
参考文献数
28

【目的】脳血管障害はしばしば嚥下障害を合併し誤嚥性肺炎を発生するが,その頻度については脳卒中の急性期に多く,回復期リハビリテーション病院入院中の経管栄養例の報告は少ない.誤嚥性肺炎の発症要因についても,いまだ十分解明されていない.今回,これらの発生率と発生要因を明らかにすることを目的とした.【方法】発症後1~2 カ月後に回復期リハビリテーション病院に入院した経管栄養を行っている脳血管障害患者158 例を対象として,誤嚥性肺炎の発生率と発症要因を検討した.誤嚥性肺炎発症群と非発症群の2群について,発生要因として年齢,性別,発生部位,嚥下障害の重症度,栄養状態のalbumin (Alb),total protein (TP),body mass index (BMI),入院時のFIM, VF・VE 施行との関連性について検討した.【結果】経管栄養を行っている脳血管障害患者158 例中22 例(13.9%)に誤嚥性肺炎を認めた.肺炎発症群と非発症群の群間比較では,重症の嚥下障害,発生部位 (脳幹・小脳),男性,認知FIM 利得で有意差を認めた (p<0.05).栄養状態 (BMI, TP, Alb),意識障害,回復期入院前の肺炎や合併症,入院時FIM では両群間に有意差を認めなかった.肺炎発症の有無を目的変数,各発生要因を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った結果では,肺炎発症の要因として,重症の嚥下障害のdysphagia severity scale (DSS) 1 (OR [odds ratio] 8.747, p=0.001),発生部位の脳幹・小脳 (OR 4.859, p=0.01),男性 (OR 5.681,p=0.006),年齢 (OR 0.941, p=0.043) が要因として抽出された.【結論】回復期脳血管障害経管栄養例の13.9%に誤嚥性肺炎を発症した.肺炎発症の要因として,脳幹・小脳病変,重症の嚥下障害,男性,高齢者が重要であった.
著者
戸原 玄 阿部 仁子 中山 渕利 植田 耕一郎
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.265-271, 2013 (Released:2013-11-06)
参考文献数
27
被引用文献数
1

日本では要介護高齢者が増加しているため,誤嚥性肺炎の予防が重要である.誤嚥性肺炎は摂食・嚥下障害により引き起こされるため,患者の食べる機能を正しく評価した対応が重要である.訪問診療で利用可能な評価法にはスクリーニングテストと嚥下内視鏡検査があり,嚥下内視鏡検査は近年小型化が図られている.咀嚼中には食塊が咽頭に送り込まれるため相対的に嚥下反射が遅延するが,症例によっては噛み方を工夫することで嚥下反射遅延を防ぐことができる可能性がある.歯科的な対応のうち特殊な補綴物には舌接触補助床および軟口蓋挙上装置がある.また,新しい訓練方法として開口訓練により舌骨上筋群を鍛えて嚥下機能を改善する方法がある.