著者
小峯 健一 浅井 健一 板垣 昌志 小峯 優美子 黒石 智誠 阿部 省吾 阿部 榮 齋藤 博水 熊谷 勝男
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.169-176, 1999-08-25 (Released:2008-03-10)
参考文献数
36
被引用文献数
1

健康な乳牛の泌乳期から乾乳,分娩期に及ぶ各ステージの乳房総計68例から乳汁を採取し,それぞれの体細胞数(SCC)とこれらの細胞が中心的に産生する生理活性タンパク分子である,ラクトフェリン(Lf),αl酸性糖タンパク(α1AG),フィブロネクチン(FN)の各濃度を測定した.さらには乳腺内リンパ球の産生するIgG1とIgG2を中心とした,免疫グロブリン(Ig)サブクラスの濃度を測定し,それぞれの変動を追跡した.その結果,SCCは泌乳期の間は低値を示したが,乾乳導入後いち早く増加した.このSCCの上昇に伴って,最も早期にLfの産生が起こり,これに続いて,αlAGやFN値も上昇し,いずれも乾乳期中期までには最高値に達した.一方,乳汁中のIg濃度は,泌乳期を通じて乾乳初期まで低値を示していたが,乾乳中期に移行するに及びIgG1を主とした濃度の急速な増加を示し,初乳分泌期である乾乳後期には極めて高値のG1/G2比(60-7)と共に,最高濃度を示した.以上の成績は,乾乳導入に伴う乳腺分泌液へのSCの集積と,それに続く生理活性タンパク分子の急速な産生は,泌乳期乳腺上皮細胞の退行と新しい乳腺組織の増殖分化を営むために必須で,また,次回分娩に備えたIgG1を主体とした乳腺内での初乳形成を促進する生理的変化であることを示唆した.
著者
渡辺 大作 阿部 省吾 植松 正巳 阿部 榮 遠藤 祥子 後藤 浩人 小林 隆之 藤倉 尚士 小形 芳美 伴 顕 平野 貴 杉本 喜憲 斎藤 博水
出版者
日本家畜臨床学会 ・ 大動物臨床研究会
雑誌
日本家畜臨床学会誌 (ISSN:13468464)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.41-45, 2004-11-10 (Released:2009-04-22)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

牛クローディン-16(CL-16)欠損症19頭およびそれ以外の腎不全黒毛和種牛2頭におけるビタミンA(VA)とレチノール結合蛋白質(RBP)の動態および過長蹄の発現について調査した。CL-16欠損症では、1-6ヶ月齢の子牛3頭を除き84%で過長蹄がみられた。CL-16欠損症を過長蹄群と正常蹄群にわけて正常黒毛和種子牛群36頭と比較したところ、過長蹄群ではRBP、VA、尿素窒素(UN)およびクレアチニン(Cre)の有意な増加がみられ、正常蹄群ではVAのみ有意な増加がみられた。RBPはVA、UN、およびCreと有意な正の相関を示し、VAはVA添加飼料が給与される5-13ヶ月齢で著しい高値を示した。腎不全牛2頭(腎盂腎炎、腎低形成症)でも過長蹄がみられ、VAおよびRBPは高値を示した。CL-16欠損症で正常蹄の牛は、若齢または軽度の腎障害であったことから、過長蹄はCL-16欠損症に特異な症状ではなく、重度の腎機能障害の持続により発現すると考えられた。