著者
阿部 真理奈 渡部 喬之 迫 力太郎 小笹 佳史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.485-490, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
10

大脳性運動失調により,日常生活で左上肢の使用が困難となった50歳代男性に対し,視覚遮断を用いた訓練を実施したため報告する.症例は右前頭葉から頭頂連合野の皮質下出血により左片麻痺,高次脳機能障害を呈し,特に視認下で左上肢の運動失調が増悪した.視認下での運動失調の増悪は,運動前野の損傷による影響が大きいと推論し,視覚遮断を用いた身体ポインティングや把持動作の作業療法を開始した.その結果,左上肢機能は改善し,日常生活でも麻痺側上肢で茶碗を把持することが可能となった.大脳性運動失調症例への視覚遮断を用いた作業療法は,上肢機能改善や日常生活での麻痺側上肢の使用頻度の向上に寄与する可能性が示唆された.