著者
阿部 真理奈 渡部 喬之 迫 力太郎 小笹 佳史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.485-490, 2023-08-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
10

大脳性運動失調により,日常生活で左上肢の使用が困難となった50歳代男性に対し,視覚遮断を用いた訓練を実施したため報告する.症例は右前頭葉から頭頂連合野の皮質下出血により左片麻痺,高次脳機能障害を呈し,特に視認下で左上肢の運動失調が増悪した.視認下での運動失調の増悪は,運動前野の損傷による影響が大きいと推論し,視覚遮断を用いた身体ポインティングや把持動作の作業療法を開始した.その結果,左上肢機能は改善し,日常生活でも麻痺側上肢で茶碗を把持することが可能となった.大脳性運動失調症例への視覚遮断を用いた作業療法は,上肢機能改善や日常生活での麻痺側上肢の使用頻度の向上に寄与する可能性が示唆された.
著者
渡部 喬之 鈴木 久義 小貫 祐介 長島 潤 迫 力太郎 川手 信行
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.17027, (Released:2018-09-28)
参考文献数
21

目的:脳卒中患者におけるやむを得ない転倒判定チェックシート(以下,判定シート)の,信頼性と予測的妥当性を検討した.方法:検者5名で脳卒中転倒者20例に対し判定シートを評価,また2名は同様の対象に再評価を行い,検者間でのFleissのκ係数,検者内でのCohenのκ係数を算出した.予測的妥当性の検討は,対象の脳卒中転倒者123名の中から判定シートを用いてやむを得ない転倒者を抽出し,その他の転倒者との間で,再転倒割合,運動FIMを比較した.結果:判定結果のFleissのκ係数は0.838,Cohenのκ係数は1.000であり,高い検者間・検者内信頼性を認めた.やむを得ない転倒者の再転倒割合は,その他の転倒者に比べ有意に低かった.運動FIMは有意に高く,やむを得ない転倒者は一定以上の能力回復を認める傾向にあった.考察:判定シートの信頼性と予測的妥当性が高いことが示された.判定シートで転倒の質を評価することは,転倒後の患者指導などに使用できると考える.