著者
阿部 真郎 高橋 明久
出版者
一般社団法人日本応用地質学会
雑誌
応用地質 (ISSN:02867737)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.265-279, 1997-12-10
参考文献数
21
被引用文献数
8 6

1995年1月の兵庫県南部地震の場合、主として花崗岩、真砂土地帯において崩壊、地すべりが多く発生した。大規模な地すべりが分布することで知られる東北地方・グリーンタフ地域においても激しい地震が発生した場合の地すべり挙動の予測が急がれる。1896年の陸羽地震、1914年の仙北地震は秋田県中央部に発生した内陸型(直下型)地震であり、多くの斜面災害を発生させている。とくに地すべりは震度6以上の地震によって発生しており、中新世前期から中期のグリーンタフ層の分布域では主に崩壊性の地すべりが、また鮮新世の砂岩、泥岩層分布域では初生すべりと思われる岩盤地すべりが多く発生している。これらの記録と現地に残る被災状況を検証した結果、東北施方・グリーンタフ地域における地震時の斜面変動形態の一部が明らかになった。すなわち、震度6の地震発生の場合、多くの斜面崩壊が、震度6〜7に達した場合には層理面に沿った初生岩盤地すべりが山地の尾根部に発生することがそれぞれ想定された。