著者
陳 暁栄 時永 祥三
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1038-1048, 2003-10-01
被引用文献数
38 4

複雑な現象を解明する手段として,マルチエージェントシステムの構成が議論されている.本論文では,人工株式市場を対象として,共進化遺伝的プログラミング(GP)を基礎としてエージェントの多様性を考慮に入れたマルチエージェントシステム構成を提案するとともに,その性質を分析する.GP手法の応用については個々のエージェントが独自の目的関数について最適化を行う行動のモデル化する場合に用いることとし,GP手法により異種のエージェントの適応的な認知プロセスをモデリングすることを試みる.システム構成では五つのタイプのエージェントを仮定し,算術式あるいはプロダクションルールをもとにして取引の方法を改善するもの,及び非合理的な挙動をするものを前提としながら,これらの学習過程において,占有的な個体プールのほかに,共有的な個体プールをも用いるグループを仮定する.これにより共進化GPを実現する.シミュレーション実験の結果として得られる株価の挙動を統計解析すると,実際の株式市場で見られるパフォーマンスに類似していることが示され,本論文の手法の有効性を検証できる.