著者
陳 玲 飯島 康夫 池田 哲夫 中野 泰 田邊 幹
出版者
新潟県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山古志地区は、2004年10月23日に突然襲ってきた新潟県中越地震で、一瞬のうちに、一部を除き、住宅の全壊、道路と田畑、山の崩壊など、これまで築かれてきた生活環境が完全に破壊された。地震後、行政措置として「全村避難」が決断された。避難所に引き続き、仮設住宅は、それまで維持してきたコミュニティを考慮した配置構成がなされ、それを暮らしの場とした被災生活が3年間続いていた。その間、「皆で山古志へ帰ろう」というキャッチフレーズ、いわゆる「帰村」をめぐって、集落移転、宅地と墓地の再編、住宅と墓の再建、水利と棚田の復旧活動などが展開されてきた。本研究では、人びとの暮らしや生きる知恵などを研究対象としてきた民俗学のこれまでの視点や方法を用いながら、現代社会という時間軸において、山古志地区の住民が災害に対して、いかに適応し対応し、そして、さまざまな葛藤する問題の中でいかに生活の再建に向かって取り組んできたのか、その実態の把握、記録、考察を行なった。「帰村」をめぐる復旧、復興活動を、いずれも生活再建、社会組織の再編過程そのものとして捉えた。