著者
陳 玲 飯島 康夫 池田 哲夫 中野 泰 田邊 幹
出版者
新潟県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

山古志地区は、2004年10月23日に突然襲ってきた新潟県中越地震で、一瞬のうちに、一部を除き、住宅の全壊、道路と田畑、山の崩壊など、これまで築かれてきた生活環境が完全に破壊された。地震後、行政措置として「全村避難」が決断された。避難所に引き続き、仮設住宅は、それまで維持してきたコミュニティを考慮した配置構成がなされ、それを暮らしの場とした被災生活が3年間続いていた。その間、「皆で山古志へ帰ろう」というキャッチフレーズ、いわゆる「帰村」をめぐって、集落移転、宅地と墓地の再編、住宅と墓の再建、水利と棚田の復旧活動などが展開されてきた。本研究では、人びとの暮らしや生きる知恵などを研究対象としてきた民俗学のこれまでの視点や方法を用いながら、現代社会という時間軸において、山古志地区の住民が災害に対して、いかに適応し対応し、そして、さまざまな葛藤する問題の中でいかに生活の再建に向かって取り組んできたのか、その実態の把握、記録、考察を行なった。「帰村」をめぐる復旧、復興活動を、いずれも生活再建、社会組織の再編過程そのものとして捉えた。
著者
西田 泰民 宮尾 亨 吉田 邦夫 八田 一 ピーター マシウス
出版者
新潟県立歴史博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

これまで国内では報告例がなかったが、旧石器時代石器・縄文時代遺構埋土・縄文時代石器・縄文時代珪藻土塊・擦文時代遺構埋土・縄文土器炭化付着物いずれからもデンプン粒を検出することができた。これにより日本のような中緯度温暖湿潤地域でも長期間デンプン粒が保存されていることが明らかになった。各考古学資料からのデンプン抽出作業をおこなう一方で、堅果類、根菜類を中心に在来食用植物の対照現生サンプル作成をおこない、240件作成した。遺物からの抽出方法や取り扱い、同定方法については先駆的研究が行われたオーストラリアよりシドニー大学フラガー博士を招聘し教授を受けた。デンプンの分解過程を解明をするため国立民族学博物館および新潟県立歴史博物館で実験石器の埋没・放置実験を半年間実施した。土器からの食性分析の手がかりとなる炭化物のモデル生成実験をおこなった。30種類の異なる食材を縄文土器に見立てた素焼き土器で薪燃料により煮沸し水分がなくなるまで加熱する実験を計60回行った結果、それぞれ性状の異なる付着炭化物が生成した。一部を採取して炭素、窒素安定同位体分析を行い、炭化前後の同位体比の変動を計測した。その結果を実際の出土炭化物と比較した。縄文時代において主たる炭水化物源となっていたと考えられ、旧石器時代も利用されていた可能性がある堅果類の加工法の一端を探るため、あく抜きをしていない堅果類と他の食材の混合比率を変えた材料を用意し石蒸しによる調理実験を行い官能検査によって可食化の可能性を検討した。タンパク質が渋みの軽減に寄与することが明らかとなった。縄文時代中期の石皿類・磨石類の集成から各属性の分析を行い、中期に食物加工用具としての意識の転換が生じた可能性があることが判明した。