著者
陳 雅賽
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.19-37, 2016 (Released:2016-11-22)
参考文献数
20

本稿は,8・12天津爆発事故(以下8・12事故と略す)について,事故直後どのような世論がどのように形成されたのかを明らかにするために,新浪微博の公式的なニュース配信アカウント「頭条新聞」の8・12事故に関する書き込みの主題,フレーム,情報源,イメージ,批判対象及び人気書き込みに付随する人気コメントの内容を分析した。その結果明らかとなったのは以下の五点である,第一に,,新浪微博の公式的なニュース配信アカウント「頭条新聞」の書き込みは主に情報伝達機能や公権力の監視機能を果たした。それらの書き込みに対するコメントは主に公権力の監視機能を果たした。第二に,爆発原因に関する政府や瑞海集団への責任追及,消防士の不当な救援措置の指摘,死亡者数や事故による環境汚染データへの不信,メディアの報道への不満,市民による事故発生後の詐欺行為など不適切な行為への批判との世論が形成されている。第三に,政府の事故対応がどのような世論が形成されるかに大きな影響を与えている。第四に,事故経験者から発信された事故経緯など第一次情報がまとめられ,ニュースの形態で配信されたオリジナル情報が過半数であったことは,フォロワーが少ない一般ユーザーによる事故経緯などの情報が速く,広く拡散できるルートが新たに生まれたといえよう。第五に,形成されたネット世論が,死亡者数や事故による環境汚染データを隠蔽しようとした天津市政府の情報開示や中央政府が事故原因を追究したことに後押しする力になった。