著者
綾塚 祐二 雅樂 隆基 安川 力 吉高 淳夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.379-387, 2022-02-15

機械学習を用いた画像分類は医療を含め幅広い分野で多くの成果をあげている.しかしその分類は何を根拠としてなされているかが人間には分かりにくい場合も多く,どこを見て分類を行ったかを可視化するためのさまざまな研究が行われている.疾患の分類のような目的のためには,画像中の「それらしい」正の寄与部分(所見)だけでなく「そぐわない」,すなわち負の寄与部分となる所見も診る必要があるが,既存の研究では負に寄与する部分は可視化の対象として注目されていない.我々は,機械学習モデルに対し,画像に微小な差異を加えた画像を入力した場合の確信度の出力の大きさの変化を画像化し提示する手法,DiDAを提案する.提案手法ではグリッド単位で区切りマスクした画像を用いて出力の差異をとらえ,複数のグリッドサイズを用いることで,正負の寄与領域を的確に描出する.DiDAを光干渉断層計による眼底の断層画像からの疾患分類に適用し眼科専門医の見解と照合した結果,DiDAによる解析画像は正負の寄与を的確にとらえていることが分かった.また,眼底の断層画像の疾患分類において画像中の正負の寄与領域を既存手法よりも的確に描出することを確かめた.