著者
吉高 淳夫 松井 亮治 平嶋 宗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1696-1707, 2006-06-15
被引用文献数
7

映画やテレビドラマといったコンテンツにおいて,アクセスの柔軟性・多様性を実現するためには,特定の雰囲気や印象を強調する演出,すなわちコンテンツに埋め込まれた感性情報を検出し,それを反映させることが重要である.様々な演出技法を述べた「映画の文法」では,ズームやドリーなどのカメラワークは,ある場面の雰囲気や印象を強調するための重要な演出手法として位置づけられている.カメラワーク検出に関する先行研究では,映像主体の視覚上の変化という観点ではほぼ同様であるが演出意図が大きく異なる,ズームイン?キャラクタドリー,ズームアウト?プルバック間の弁別ならびにそれらの検出を,動物体の存在を前提として十分な精度で検出することは未解決であるため,カメラワークによる演出を検出できない.本論文では,上記カメラワークを区別して検出することにより,カメラワークによる演出効果により映像に込められた感性情報を抽出する手法を提案する.さらに,動物体存在下で上記カメラワークを検出,弁別し,カメラワークに基づく演出,すなわち感性情報を検出するという目的に対する提案手法の有効性を評価した.In order to facilitate flexible access to contents such as movie or drama provided as video data, it is promising to take the sense of atmosphere into account. Film grammar prescribes various types of rendition that are commonly applied in producing movies or dramas. Camera work, such as zooming or dollying is regarded as an important technique which is often applied in order to emphasize a certain atmosphere of a scene. Previous studies that extract camera work did not take separation of zoom-in/out and character dolly/pull back into account, under the circumstance of the existence of moving objects. Therefore, they cannot extract rendition with respect to camera work. This paper proposed a framework of distinguishing zoom-in/out from character dolly/pull back. This distinction is mandatory for extracting emotional rendition by camera work, since situation of applying zoom-in/out is quite different from that of applying character dolly/pull back. The effectiveness of the proposed method is evaluated and the result is also presented in this paper.
著者
川野 晃寛 吉高 淳夫 平嶋 宗
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.11, pp.105-111, 2008-01-31
被引用文献数
1

大学などにおいて講義をアーカイブ化して活用する動きが盛んになっている.講義のアーカイブ化のためには講師と受講者が発する情報を映像として記録することが重要である.講師は多くの場合一人であり,行動範囲が限られているため撮影が容易である.しかし,受講者に関しては不特定位置に複数存在するため,撮影対象を特定し撮影することはより困難である.そこで,本研究では位置が不特定な発言中の受講者をミドルショットで撮影する手法を提案する.提案手法では,受講者はマイクロホンを持って発言を行うという条件の下で,マイクロホンに取り付けた赤外線タグの位置を検出し追跡することで発言中の受講者を撮影する.There are many cases where lectures are recorded to build video archive for improving reusability. It is important to record utterance by the lecturer or students. In many cases, a lecture is given by a single lecturer and the possible area of his/her movement is relatively limited. Therefore, it is easy to shoot the lecturer. However, shooting one of the students who is asking a question is more difficult problem since the position of the student is located at an arbitrary position in the wider area in the classroom. This paper focuses on the issue of shooting a student in utterance by the middle shot size. We propose a novel method of shooting a student in utterance using the IR-tag installed on the microphone. By detecting the IR-tag, a student in utterance is kept tracked.
著者
平川 正人 吉高 淳夫 市川 忠男
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

ユーザインタフェースは従来の文字主体のものから視覚情報を用いたものに移り変わってきている.更にマルチメディア技術の進歩は,音や動画なども交えた,よりユーザ親和性に優れたインタフェースの提供を可能にしている.ただし対話メディアに複数のメディアを活用するだけでは真に使いやすいシステムとは言えず,コンピュータ処理の質的改善が欠かせない.本研究では,そのような目標に向けたひとつのアプローチとして,コンピュータに社会性を持たせるための基礎的研究を行った.社会性の提供に向けては,まず人間の置かれている“状況"というものをコンピュータが把握する必要がある.そこで状況についての検討をおこない,意味内容の違いから状況を3つのレベルに分類した.さらに,状況認識に基づいた情報管理・アクセスのための基本的枠組みを提案した.また,画像ならびに音声が提供し得る意味について詳細な検討をおこなった.各種メディアデータとして得られる情報を統合し,より高度な状況理解を実現するための研究を進めた.実際に音声,音,映像から各種の特徴データ抽出実験を行なった.さらに,音と映像以外の状況認識の手だてとして,物理的位置の利用可能性について検討をおこなった.位置認識デバイスにGPSを用いた実験の結果,位置情報は状況認識にあたって極めて有効に機能することを確認した.一方,人間とシステムの関係に注目するだけでなく,人間と人間の間で交される対話の過程への状況の利用促進を図ることを目標に,物理的に同じ場所を共有する人間同士の間での情報交換を支援する機能を開発した.プロトタイプシステムの構築を行い,提案した手法の有効性を確認した.
著者
吉高 淳夫 松井 亮治 平嶋 宗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1696-1707, 2006-06-15

映画やテレビドラマといったコンテンツにおいて,アクセスの柔軟性・多様性を実現するためには,特定の雰囲気や印象を強調する演出,すなわちコンテンツに埋め込まれた感性情報を検出し,それを反映させることが重要である.様々な演出技法を述べた「映画の文法」では,ズームやドリーなどのカメラワークは,ある場面の雰囲気や印象を強調するための重要な演出手法として位置づけられている.カメラワーク検出に関する先行研究では,映像主体の視覚上の変化という観点ではほぼ同様であるが演出意図が大きく異なる,ズームイン?キャラクタドリー,ズームアウト?プルバック間の弁別ならびにそれらの検出を,動物体の存在を前提として十分な精度で検出することは未解決であるため,カメラワークによる演出を検出できない.本論文では,上記カメラワークを区別して検出することにより,カメラワークによる演出効果により映像に込められた感性情報を抽出する手法を提案する.さらに,動物体存在下で上記カメラワークを検出,弁別し,カメラワークに基づく演出,すなわち感性情報を検出するという目的に対する提案手法の有効性を評価した.
著者
吉高 淳夫 西田 謙太郎 平嶋 宗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1467-1476, 2009-05-15

人の視線には,興味や関心などの心的な状態が現れることが知られている.このため,視線からこれらの情報を抽出し,人とコンピュータとのインタラクションを円滑にする視線インタフェースや,インタラクティブシステムの操作性に対するユーザビリティ評価で利用する試みが行われている.しかしながら,傾注状態(何かを見ている状態)の検出に関しては,傾注の有無を視線の停留時間により判別するにとどまっているのが現状である.傾注には,対象が単に視界に入っている状態,視界中から興味の対象となる物体を探す状態,特定物に傾注して詳細な情報を得る状態など複数の状態があると考えられ,傾注の状態をより細かく識別することは視線に基づくインタラクションの高度化に貢献すると考えられる.本論文では,傾注状態をさらに分類して認識することを目標とし,複数の注視状態があることが知られている絵画鑑賞活動に着目する.絵画鑑賞における眼球運動には,視界中から興味の対象となる物体を探す「拡散的探索」と特定物に傾注して詳細な情報を得る「特定的探索」がある.本論文では注目時の状態のうち,「特定的探索」時の視点を検出する手法について検討し,停留時間に加えて停留の発生頻度を用いる検出法について考察した.さらに,この検出手法を実装し,小規模ではあるが実験的に本手法の有効性を確認し,本手法が傾注状態を複数の状態に分類できる可能性を示した.
著者
綾塚 祐二 雅樂 隆基 安川 力 吉高 淳夫
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.379-387, 2022-02-15

機械学習を用いた画像分類は医療を含め幅広い分野で多くの成果をあげている.しかしその分類は何を根拠としてなされているかが人間には分かりにくい場合も多く,どこを見て分類を行ったかを可視化するためのさまざまな研究が行われている.疾患の分類のような目的のためには,画像中の「それらしい」正の寄与部分(所見)だけでなく「そぐわない」,すなわち負の寄与部分となる所見も診る必要があるが,既存の研究では負に寄与する部分は可視化の対象として注目されていない.我々は,機械学習モデルに対し,画像に微小な差異を加えた画像を入力した場合の確信度の出力の大きさの変化を画像化し提示する手法,DiDAを提案する.提案手法ではグリッド単位で区切りマスクした画像を用いて出力の差異をとらえ,複数のグリッドサイズを用いることで,正負の寄与領域を的確に描出する.DiDAを光干渉断層計による眼底の断層画像からの疾患分類に適用し眼科専門医の見解と照合した結果,DiDAによる解析画像は正負の寄与を的確にとらえていることが分かった.また,眼底の断層画像の疾患分類において画像中の正負の寄与領域を既存手法よりも的確に描出することを確かめた.
著者
板宮 吉宏 御手洗 紘子 吉高 淳夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.43-46, 2013
参考文献数
10

良い写真を撮るためには主題を明確にすることが重要である.写真構成要素の配置を考慮する構図には主題を明確にする効果がある.本稿では構図と顕著性に基づく写真撮影支援手法を提案する.事前調査より,写真撮影のプロフェッショナルは写真1枚当たり平均約1.7個の構図を適用して写真を撮ることが分かった.そこで,提案手法では認識された構図と共起性がある構図を考慮し,一つまたは複数の構図を適用させた提案構図を算出する.提案構図は撮影者へ提示し,主題を明確にするための撮影支援を行なった.評価実験の結果,構図の配置による写真の有意差は認められなかった.しかし,SD法を用いた主観評価において,提案手法で撮影した写真に構図の効果を表す心理量が確認できた.
著者
板宮 吉宏 御手洗 紘子 吉高 淳夫
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 37.12 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
pp.43-46, 2013-02-26 (Released:2017-09-21)
参考文献数
10

良い写真を撮るためには主題を明確にすることが重要である.写真構成要素の配置を考慮する構図には主題を明確にする効果がある.本稿では構図と顕著性に基づく写真撮影支援手法を提案する.事前調査より,写真撮影のプロフェッショナルは写真1枚当たり平均約1.7個の構図を適用して写真を撮ることが分かった.そこで,提案手法では認識された構図と共起性がある構図を考慮し,一つまたは複数の構図を適用させた提案構図を算出する.提案構図は撮影者へ提示し,主題を明確にするための撮影支援を行なった.評価実験の結果,構図の配置による写真の有意差は認められなかった.しかし,SD法を用いた主観評価において,提案手法で撮影した写真に構図の効果を表す心理量が確認できた.
著者
小林 優 吉高 淳夫 平川 正人
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.28(2001-FI-066), pp.135-142, 2002-03-15

本論文では、利用者の分類に対する意図をクラスタリング結果に反映させ、かつ、文書クラスタリングを効率よく行うために、適切なクラスタ代表を求める手法を提案する。本手法では、利用者の分類例示に基づいて形成されるクラスタの主題を表す特徴要素を多く含む文書をサンプルとして選出し、そのサンプルをクラスタに追加することで、クラスタ代表の算出を行う。ここで、追加されたサンプルによっては、適切なクラスタ代表を求めることができない場合があるため、サンプルの追加と除去、クラスタ代表の算出を繰り返し行うことによって、クラスタ代表を洗練する。
著者
小谷 活太 吉高 淳夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.39, no.11, pp.29-32, 2015-03-03

良い写真を撮るためには主題を明確にすることが重要である.被写体の配置を考慮する構図と,被写体を際立たせる被写界深度には主題を明確にする効果がある.本稿では構図と被写界深度に基づく撮影支援手法を提案する.事前調査より,写真撮影のプロフェッショナルは人物写真において,構図の種類により被写界深度を変えることがわかった.そこで提案手法では構図と被写界深度の関係に着日し,構図に対して適切な絞り操作を撮影者に提示することで主題を明確にするための撮影支援を行った.評価実験の結果,撮影支援を行わなかった場合,写真撮影のプロフェッショナルの傾向とは異なる撮影結果となった.撮影支援を行った場合,写真撮影のプロフェッショナルの傾向に従った主題の明確な写真を撮影することができた.
著者
吉高 淳夫 尾崎昂 平嶋 宗
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.1421-1430, 2009-04-15

映像への効率良いアクセスを実現するためには映像の構造化が不可欠であり,また構造化を行うためにはカット検出だけでなくシーン境界検出等,相互に関係するショットをまとめる処理が必要である.映画やドラマにおいては,2種類の類似したショットが交互に繰り返される,ショット・リバースショットが会話の場面等で多用されるという特徴がある.ショット・リバースショットはカメラ操作をともなわない静的なショットから構成されることが比較的多いため,キーフレームの色領域に関する空間関係の類似度評価等,画像の静的特徴により検出するものが多かった.しかし,パン,チルト等のカメラ操作が施される場合もあり,そのような映像では全体が変化するために従来の静的な類似性判定では検出することは困難である.このようなショット区間の検出は映画のシーン境界検出やインデクシング,検索に必要であり,カメラワークを含むものも検出できることが精度向上のために望まれる.本論文ではカメラワーク成分をキャンセルする処理を施すことで一様な動きをした背景部分の除去を行い,残された主体部分の類似性判定に基づきショットどうしの類似性を判定することによって,カメラワークを含むショット・リバースショットの場面を抽出する手法を提案する.そして,カメラワークキャンセルを考慮しない従来検出法との比較により,提案手法の効果について評価した.
著者
吉高 淳夫
出版者
北陸先端科学技術大学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

小型ビデオカメラや映像共有環境の普及により一般ユーザも映像を制作し共有することが一般的になっている.撮影法による非言語情報,特に感性情報の表現を意識しない,あるいは知らないユーザにより制作された映像は制作者の意図を適切に伝えることが出来ない場合が多い.この問題を解決するために,目標とする非言語情報表現に従い映像撮影を支援するインタラクションモデルの検討ならびにそれに基づく撮影システムを実装し,その効果を評価した.