著者
岸岡 史郎 雑賀 史浩 深澤 洋滋 木口 倫一 小林 大地
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

マクロファージのフェノタイプ制御に及ぼすニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)シグナルの影響を精査し、神経障害性疼痛を含む慢性炎症疾患の治療に繋がる研究を行った。神経障害性疼痛を担う炎症性マクロファージにはnAChRが発現しており、nAChRリガンドの処置により炎症性因子の産生が抑制されることをin vivoおよびin vitroにおける各種解析から証明した。さらにnAChRリガンドを投与することで、神経障害性疼痛病態が改善することも明らかにしている。従って、nAChRシグナルを介した炎症性マクロファージの制御は慢性炎症疾患の治療に有用な薬物療法として期待される。
著者
木口 倫一 岸岡 史郎 雑賀 史浩
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

前年度は坐骨神経部分結紮による神経障害性疼痛モデルマウスを用い、主に後根神経節において神経炎症依存的に発現変動する因子に着目した検討を行った。本年度は、傷害坐骨神経に集積するマクロファージが担う末梢性感作と中枢性感作の機能的連関を詳細に検討した。炎症性マクロファージ抑制薬であるニコチン性アセチルコリン受容体α4β2サブタイプ特異的リガンドを傷害末梢神経に局所投与すると、神経障害性疼痛が改善した。また神経傷害後の脊髄におけるミクログリアの形態的活性化ならびに炎症関連因子(IL-1β、CCL3、CD68、IRF5など)の遺伝子発現増加は、マクロファージ抑制薬の末梢局所投与により減少することを見出した。これらのマクロファージ抑制薬は神経傷害の3週間後から投与しても有効であり、その際に脊髄ミクログリア関連因子の減少効果も同時に認められた。すなわち、神経障害性疼痛の形成および維持機構のいずれにおいても炎症性マクロファージによる末梢性感作が重要な役割を果たすことが示唆される。さらに、糖尿病性や抗がん薬誘発性などの異なる神経障害性疼痛モデルにおいても、同様の機序の関与を示唆するデータが得られている。昨年度までの結果を踏まえると、炎症性マクロファージ由来のサイトカインやケモカインが後根神経節における中枢感作調節因子(サイトカインおよび神経ペプチドなど)の発現を亢進させ、脊髄グリア細胞の活性化を調節することを明らかにできたといえる。