著者
難波 蓮太郎
出版者
公益社団法人 日本コンクリート工学会
雑誌
コンクリート工学 (ISSN:03871061)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.5-18, 1991-09-01 (Released:2013-04-26)
参考文献数
22

コンクリート造建物の外壁は一般に陶磁器質タイル張りや建築用仕上塗材の吹付けによって仕上げられており, またその下地としてコンクリートとの間にモルタル塗りを施す場合が多い。これらの仕上げは1964年の東京オリンピック以来, 建物の高層化・大型化と多量生産にともなって, コンクリート躯体とモルタル層または張付けモルタル層とタイルとの界面で剥離 (浮き) を生じたり, それがついには仕上層の剥落にまで発展し, 長い間しばしば社会問題として取り上げられてきた。1989年11月21日に北九州市小倉地区で発生したタイル外装壁における仕上層の剥落事故はその最悪の事態となり, 事故直後に日本建築仕上学会では外壁等剥落防止対策研究委員会を設置して問題点の解決のための4っの作業部会で調査・研究を行い, この成果を本年3月に公表した。これをもとにして, (1) 材料・工法の沿革, (2) 剥落防止のための設計・施工指針 (案), (3) 診断と補修技術, (4) 診断および補修・交換事例調査の分析について解説する。