著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.73, no.4, pp.218-223, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
38
著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.69, 2017

<b>目的</b> クエン酸を用いてカルボキシ基を導入後に銅処理した染料不使用型の消臭綿布について,既に報告した.クエン酸処理綿布についてはアンモニアやエタンチオールに対する除去能は認められたが,酸処理に伴う綿繊維の脆化がみられた.本研究では,調製消臭布の強度を保持する目的で新たにクエン酸塩を用い,その消臭能を検討した.<br><b>方法</b> 綿ブロードを25℃のクエン酸二水素ナトリウム水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸塩処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布2 gを入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法またはガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.<br><b>結果</b> 得られた試料布の強度はクエン酸処理の場合よりも高かった.未処理綿布(白布)に対し,クエン酸塩処理綿布のアンモニア除去性能は顕著に向上した.カルボキシ基が繊維高分子に導入され,酸塩基中和反応による除去性が高まったと考えられる.また,クエン酸塩処理後に銅処理を行うことにより銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得られた消臭綿布は,酸塩基中和反応によるアンモニア除去と銅の酸化分解作用によるチオール除去という2つの異なる消臭機構を合わせ持つとともに,処理による強度低下が少なく,実用上有用であると考えられる.
著者
雨宮 敏子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.68, 2016

<b>目的 </b>これまで媒染染色により染料を銅の主な担持サイトとした消臭綿布を調製してきた.本研究では染料を用いず,多価カルボン酸を用いて綿布にカルボキシ基を導入後,銅処理を行った.調製した試料布のアンモニアやエタンチオールに対する除去能を検討した.<br><b>方法</b> 綿ブロードを25℃のクエン酸水溶液に浸漬し,予備乾燥後,熱処理を行った.クエン酸処理後,硫酸銅(II)五水和物を用い85℃で30 min,銅処理を行った.試料布を入れた2 Lテドラーバッグにアンモニア1000ppmまたはエタンチオール100ppmを含む空気を導入後,バッグ内の気体の残存濃度を気体検知管法または炎光光度検出器を用いたガスクロマトグラフ法で経時的に測定した.<br><b>結果</b> アンモニア除去については,30 min後,クエン酸未処理綿布(白布)では 600ppmであったのに対し,クエン酸処理綿布では0ppmを示し,クエン酸処理によりアンモニア除去性能が顕著に向上した.導入されたカルボキシ基との酸塩基中和反応による除去が行われたと考えられる.また,クエン酸処理により銅の取込量が増加したことから,導入されたカルボキシ基が銅の結合サイトとして用いられたことが示された.本研究で得た試料布はこれまでの媒染染色による銅量より少なかったが,エタンチオールに対する酸化分解型の除去能は示された.近年のアゾ染料への規制強化を考慮し,染料を用いずに綿布に銅を担持する方法は有用であると思われる.