著者
大久保 暢子 雨宮 聡子 菱沼 典子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
聖路加看護学会誌 (ISSN:13441922)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.58-63, 2001-06-30
被引用文献数
3

意識障害患者に対する意識レベルの改善をめざした看護ケアの一つに、背面開放端座位ケアがある。背面開放端座位は背面を支持せず、背筋を伸ばし脊柱の自然なカーブを損なわないで、足底を接地した姿勢であり、補助具が開発されている。くも膜下出血および脳内出血後の遷延性意識障害患者1例に、入院中および在宅での訪問看護で補助具を用いた背面開放端座位ケアを行い、意識レベルの改善に背面開放端座位が関与している示唆を得たので報告する。意識レベルの測定には、東北療護センター遷延性意識障害度スコア(以下広南スコアと称す)を用いた。事例は78歳の女性で、入退院と訪問看護による在宅での療養生活を送ることで背面開放端座位ケアが提供される時期、されない時期を繰り返すことになった。初回の背面開放端座位ケアは、入院中で遷延性意識障害と診断されて4ヶ月後から退院までの5週間であり、2回目は退院後10日を経た後からの7週間であった。初回導入前の広南スコアは61〜64点(重症例)で、毎日、1日2回の背面開放端座位ケアを導入して広南スコアは徐々に低下し、5週目に54点(中等例)まで回復した。退院後10日間の寝たきり状態で、スコアは背面開放端座位ケア導入前と同程度の64点(重症例)に戻っていた。再度、背面開放端座位ケアを週3回1日1回ずつ開始したところ、2週目で51点(中等例)に改善を示し、ケア継続中はその点数を維持していた。ケアを施行した期間は長期にわたり、他の要因に変化があった可能性はあるが、医学的治療には変化がなく、在宅への移行は大きな環境の変化であったが、スコアが上がる結果となり、環境変化よりも寝たきりになったことが、意識障害度に変化を与えたものと考える。背面開放端座位ケアの施行に関し、その開始時期や継続性、1日の回数等、検討課題が残されたが、今後さらに事例検討を重ねて、背面開放端座位ケアの意識回復への効果を検証していきたい。