著者
雲林 秀徳 佐用 昇 芥川 進 坂口 登志昭 鶴田 治樹
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.12, pp.835-846, 1997-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
62
被引用文献数
7

BINAPを配位子とする遷移金属錯体触媒を用いた不斉触媒反応の開発と工業的合成法の確立について述べる.まず,BINAP-ロジウム触媒を用いたN,N-ジエチルゲラニルアミン(GDEA)の不斉異性化反応を鍵反応とするl-メントール合成の工業化を行った.この工程の工業化は1)異性化基質であるGDEAの合成,2)BINAPの合成,3)ロジウム錯体の簡易合成法,4)触媒反応の高効率化という四つの問題を解決することにより確立した.このプロセスの完成後,不斉触媒反応の開発を続けた結果,BINAP-ルテニウム錯体が近傍に官能基を有するオレフィソ類,ケトン類の不斉水素化反応に有効な触媒であることを見いだした.そして,この不斉水素化反琳を鍵反応とする4-アセトキシ-2-アゼチジノン(4-AA)および1,2-プロパンジオール誘導体(2-PPD)合成の工業化を完成した.特に,4-AAの合成においてはα-置換β-ケトエステル類のジアステレオ選択的不斉水素化反応,つまり,同時に二つの不斉点を制御する方法を開発し,さらにルテニウム触媒を用いたラクタム環への位置選択的アセトキシ化反応を開発することにより工業化を確立することができた.また,本論文では不斉水素化反応を用いたその他医薬品中間体合成の開発についても述べる.