著者
谷川 直昭 石川 大樹 露木 敦志 前田 慎太郎 高橋 奏衣 小宮山 幸子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C1023, 2004

【目的】<BR>近年、関節鏡視下手術の進歩は目覚しく、半月板損傷の手術療法は鏡視下縫合術や部分切除術が広く行われている。また、円板状半月板障害に対しても鏡視下半月板形成的切除術が主流となっている。半月板損傷に対する縫合術や部分切除術後のリハビリテーションに関する文献は多いが、円板状半月板形成的切除術後のものは散見する程度であり、さらにスポーツ選手の術後スポーツ復帰に関するまとまった報告は、我々の知り得た範囲では存在しなかった。そこで今回我々は、スポーツ選手における円板状半月板形成的切除術後のスポーツ復帰の実際を報告する。<BR>【対象および方法】<BR>当院において1997年5月~2003年10月までに膝円板状半月板障害に対し、鏡視下半月板形成的切除術を行ったスポーツ選手26例34膝{男性18例24膝、女性8例10膝、手術時年齢は11歳~51歳(平均23.8歳)}を対象とした。これらの症例に対し、スポーツ種目、スポーツ復帰時期および術前後のスポーツレベル、術後合併症の有無とその対処方法について調査した。なおスポーツレベルについてはTegner activity scoreを用いて評価した。<BR>【結果】<BR>スポーツ種目は、サッカーが14例(53.8%)で最も多く、次にテニス3例(11.5%)、ダンス2例(7.7%)と続いた。スポーツ復帰時期は術後7週~18週(平均11.1週)であった。スポーツレベルは、術前のTegner activity score 7.6±1.6点が術後Tegner activity score 7.6±1.6点であり全例、元のスポーツに復帰していた。術後合併症は、疼痛、関節水腫がスポーツ復帰前1例、復帰後(術後3~6ヵ月)5例に見られた。<BR>【考察】<BR>スポーツ種目でサッカーが53.8%と半数以上を占めていたが、これは当院が横浜の某Jリーグチームの指定病院となっているため患者数におけるサッカー選手の割合が多かったことが要因であると考えられる。スポーツ復帰時期にはばらつきがあるが、両側同時手術例や中高年による変形性関節症性変化(以下OA)を合併しているケースの場合は復帰に時間のかかる傾向にあった。しかし、術後のスポーツレベルは全例で元のレベルまで戻っており、OAを合併していても慎重な後療法を行うことによってスポーツ復帰は可能であることがわかった。またスポーツ復帰を果たしても術後3~6ヵ月で関節水腫を合併する症例が見られたが、ヒアルロン酸の関節内注入と2~3週間の運動制限によって症状は消失した。<BR>【まとめ】<BR>1.スポーツ種目、年齢に関わらず、術後平均11.1週でスポーツ復帰が可能であった。2.全例、元のスポーツレベルに復帰可能であった。3.術後、関節水腫に対しては、ヒアルロン酸の関節内注入と運動制限が有効であった。
著者
小寺 麻美 石川 大樹 露木 敦志 前田 慎太郎 浅野 晴子 谷川 直昭 中澤 加代子 園田 剛之 福原 大祐
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P1481, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】膝前十字靭帯(以下ACL)損傷は非接触型損傷が7割以上を占め、その多くはknee-in&toe-out肢位での受傷であることが報告されている.そして近年、ACL損傷予防として股関節外転筋トレーニングが注目されるようになってきた.当院でもACL再建術後の再損傷や反対側損傷予防のため、リハビリテーションプログラムにCKCでの股関節外転筋トレーニングを追加したところ、反対側損傷が大幅に減少したことを報告した(2008年日本臨床スポーツ医学会学術集会).今回は当院で行っている股関節外転筋トレーニングを臥位と立位に分け、それぞれ中殿筋と大殿筋に着目し表面筋電図を用いて解析したところ、興味深い結果を得たので以下に報告する.【対象および方法】対象は下肢に整形外科的疾患の既往がない健常男性3名とした.被検者には本研究の主旨を十分に説明し、同意の下で協力を得た.測定項目は1)側臥位での股関節外転運動、2)サイドブリッジ、3)立位での股関節外転運動(OKC)、4)3の時の支持側(CKC)の4項目とし、測定筋は中殿筋および大殿筋とした.中殿筋は腸骨稜から1横指遠位、大殿筋は筋腹中央のそれぞれ筋繊維に沿って電極を貼付した.測定にて得られた筋電信号をサンプリング周波数1000Hzにてコンピューターに取り込み、筋電積分値(IEMG)を求めた.各運動は1秒毎にリズムを取りながら行い、各測定時間から4秒間(各2運動)を抽出した.求めたIEMGを比較検討するため、Danielsらの肢位にて各筋の最大随意等尺性収縮を測定し正規化した(%IEMG).立位運動にはROTARY HIP(CYBEX社製)を用いた.【結果】%IEMGの比較より、中殿筋と大殿筋の筋放電量は臥位より立位において有意に多かった.また、立位での筋放電量はOKCに比べてCKCで多かった. 筋電図波形の比較より、すべての運動において中殿筋が先行して活動した.また、このことは特に立位において著明であった.【考察】すべての股関節外転運動の筋電図波形において、中殿筋が先行して働き、遅れて大殿筋が活動していた.また、このことは臥位より立位にて著明であった.これらよりknee-in&toe-outを予防するためには中殿筋だけでなく大殿筋にも着目する必要があり、さらに中殿筋が活動するタイミングも重要であることが示唆された.また、筋放電量は臥位に比べて立位で多かった.特に立位での大殿筋放電量においてはOKCよりもCKCで有意に多かった. 以上より、ACL再建術後のリハビリテーションにおける再損傷や反対側損傷を予防するための股関節外転筋トレーニングは、全荷重が許可され次第可及的早期に立位かつCKCで行うことが望ましいと考えた. 本学会では、表面筋電図解析にて効果的と思われた股関節外転筋トレーニングの実際を紹介する.