著者
青井 新之介 中澤 高志
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.12-32, 2014 (Released:2014-09-17)
参考文献数
35
被引用文献数
2

本稿の目的は,社会・経済的地位が家族的地位への規定性を強めているとの認識の下で,方位角による展開法の適用によって同心円構造とセクター構造を分離し,東京圏の居住地域構造の変容を客観的に把握することである.社会・経済的地位の指標としてはブルーカラー従事者率を,家族的地位の指標としては世帯内単身者率を用いた.対象者は30∼34歳の男性で,単位地区は市区町村である.両指標は,外縁部に向かうほど上昇する同心円構造を強めており,ブルーカラー従事者では1980年からその傾向が現れていた.展開法を適用したところ,ブルーカラー従事者率については,セクター構造はパターンとしては安定しているが説明力を弱めていた.一方,世帯内単身者では,元来不明瞭であったセクター構造が2000年以降に検出されるようになった.都心を頂点とする同心円構造の強まりは,地代を基準とする市場原理の下で,居住地域構造が再編成されつつあることを示唆する.