著者
青木 いづみ 進士 五十八
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.120-129, 2002-09-20
被引用文献数
1

本研究は,東京都の建築紛争において特に,高さを問題とする紛争を対象に,紛争建築物の階数をその周辺範囲の建築物の平均階数と比較してどの程度突出すると紛争となるか分析し,住民の建築物の高さに対する許容限界について把握することを目的とした。紛争建築物の影響圏は紛争建築物から半径300mの範囲とした。また用途地域・地域性による許容限界の違いについて考察した。その結果,(1) 許容限界は影響圏の建築物の平均階数と相関関係にあり,(2) 許容限界は住居系地域ではY=1.9422X-1.2376,商業系地域ではY=3.0172X-2.7344,工業系地域ではY=6.3698X-8.7268の近似直線で表すことができた。(3) 許容限界は山の手・川の手のような地域性によって異なること,また(4) 影響圏内建築物の平均階数が3階以下で2階建てが70%以上を占めるような町並みでは,建築紛争を避けるためには,住居系・商業系地域では3階,工業系地域では4階を住民の許容限界と見なす方が安全である。