著者
伊藤 香織 青野 貞康 大森 宣暁
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.873-878, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
13
被引用文献数
4 5

本研究は,東日本大震災時の首都圏における帰宅行動,特に帰宅までの立ち寄り行動とその内容に着目し,発災から帰宅までの間にどのような人にどのようなサービスニーズがあり,どのような施設がどのように帰宅行動を支えたのかを明らかにする.2011年3月11日の首都圏での帰宅行動に関するwebアンケート調査の回答をデータとして,まず立ち寄り施設で受けたサービス内容についてロジスティック回帰分析を行うことで,どのような人にどのようなニーズがあったかを明らかにする.続いて,立ち寄り時にどのような状況に接してどのような心理変化が引き起こされたのかを明らかにするためにアンケートの自由回答をテキストマイニングで分析する.サービスの分析からは,出発時刻や性別などによってニーズが異なること,また,職場・通学先・家族宅等以外で地震に遭った者が特に帰宅支援サービスを必要としていたことが明らかになった.心理・状況の分析からは,人々は安否確認,飲食物入手,鉄道運行,待機行列,帰宅行動などを気に掛けていたこと,飲食店,小売店,職場,友人・家族宅などで安心感を得ており,ある種の共助的な支援があったことも確認できた.