著者
植田 圭吾 八木 明男 王子 剛 韓 哲舜 岡本 英輝 平崎 能郎 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.119-123, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
15
被引用文献数
1

腸膣瘻は膣からの排ガス,排便,会陰部のびらんや膣炎などをきたす病態である。腸膣瘻に漢方治療が有効であった症例を経験したので報告する。症例は62歳女性。潰瘍性大腸炎(UC)に対して大腸亜全摘術,回腸嚢肛門管吻合術を施行された。その後腸膣瘻によると考えられる膣からのガス・便排出を生じ,残存直腸におけるUC 再燃を考慮した内科的治療で軽快した。この7年後に同様の症状を生じたが,同様の内科的治療は効果なく回腸嚢炎はあるものの瘻孔が同定されないなどの理由のため手術による閉鎖の適応もなかった。内科的治療の継続による症状の軽快はなく漢方治療を行うこととなった。胃風湯加黄耆の投与で若干の改善がみられたが,五苓散料に転方したところ症状の消失を得た。五苓散による腸膣瘻の治験例は近年見られないため貴重な症例と考えた。また,今回のように西洋医学的な治療が難しい腸膣瘻に対し,漢方治療は試みる価値があると考えた。
著者
韓 哲舜 平崎 能郎 岡本 英輝 植田 圭吾 八木 明男 島田 博文 王子 剛 永嶺 宏一 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.112-118, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 7

71歳女性。腰部脊柱管狭窄症の診断の下,長引く腰痛に対して神経・椎間板ブロックや投薬治療が行われていたが改善しないため,漢方治療目的に当科を受診した。身体所見では腰痛の他に頑固な便秘とこむら返り,間欠的な胸痛ならびに全身の強い冷えを認めた。また漢方的所見として強い瘀血と血虚を認めた。当帰四逆加呉茱萸生美湯エキスや通導散エキスにて加療するも改善が得られず入院加療となった。慢性的な瘀血と血虚に対して血府逐瘀湯加減,また間欠的な胸痛に対して烏頭赤石脂丸料をほぼ同時期に開始した所,冷えと腰痛の改善が得られた。本症例は慢性的な冷えと瘀血,血虚を改善する事で血行が促進されたため,冷えと腰痛の改善が得られた可能性が示唆された。