著者
韓 成一 Sung-Il Han
雑誌
AGI working paper series
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.1-34, 2013-04

近年の東アジア諸国の飛躍的な経済発展と共に,東アジア域内の国際海上物流の世界市場に占める割合と重要性は益々高まってきた。かつて東アジア国際海上物流ハブの役割を果たしていた日本の主要港湾の国際コンテナ貨物取扱量は低迷を続けている。日本の港湾を発着地とする基幹航路は減少しており,最近は特に韓国の釜山港を外貿に利用している西日本の日本海側港湾も増加している。このような日本港湾の韓国フィーダー航路化が進んでいる中,本稿では北部九州と山口地方の外貿コンテナ物流における韓国港湾の利用度についてその動向を調査分析する。特に北九州港・博多港・下関港の3港湾を選定し,韓国港湾を外貿に利用する3港貨物の割合,積み替えコンテナ量,実入りコンテナ量などの動向を分析した。分析に用いたデータは,主に韓国関税庁の貿易統計照会システムTRASSを追跡して得られた最近13年間の日韓間外貿コンテナ貨物量である。なお,日韓両国の統計を用いるため,各々の港湾統計の整合性を確認した上,併用を試みている。分析の結果,3港の外貿コンテナ貨物の韓国港湾利用度は,下関港-博多港-北九州港の順に高いが,北九州港の韓国港湾利用度が急速に伸びている傾向を確認した。また,北九州港と博多港の輸出入別外貿コンテナ貨物の韓国港湾積み替えが増加している傾向と,空コンテナ量が多いことを観測した。本稿の分析結果は北部九州・山口地域の日韓国際海上コンテナ物流の現状分析と共に,今後の九州地域を中心とする国際海上コンテナ貨物量の推移を予測する際に参考になると期待している。
著者
田村 一軌 韓 成一 戴 二彪
出版者
公益財団法人 アジア成長研究所
雑誌
東アジアへの視点 (ISSN:1348091X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.37-46, 2015 (Released:2020-03-03)
参考文献数
20

日本で毎年様々な祭りが国内各地で開催されている。日本の祭りは,従来は宗教色の強い伝統行事というイメージが強かったが,1980 年代以降,都市コミュニティの連帯感を増強するために,多くの市民の参加を引き付ける娯楽性を重視する祭りが増えた。近年では,少子高齢化が進むなかで地方圏都市の商業・飲食サービス業の低迷状況が続いており,観光や商業振興の起爆剤として祭りの経済的な役割にも期待が集まっている。地方自治体は地域活性化における祭りの役割を重視しつつあるが,自治体の財政事情が厳しくなるなかで,祭り運営に対する積極的な関与が財政状況の悪化に繋がるリスクがあるとも懸念されている。 本研究は,北九州市における祭りの歴史と近年の開催動向,祭り運営の取り組みを紹介したうえで,同市の都市振興戦略における祭り開催の位置づけとその実際の効果を考察する。また,北九州ならびに類似の地方都市における祭り運営のあり方について若干の提言を行う。