著者
韓 晶岩
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.592-603, 2004-08-01 (Released:2011-03-18)

微小循環とは細動脈、毛細血管、細動脈を含めた血管床であり、全身血管系の90%以上を占め、体内の物質交換と新陳代謝を営む重要な場である。微小循環障害は、血管径と血行速度、活性酸素の過剰産生、血管壁への白血球と血小板の膠着、血管透過性の方進、血管外の肥満細胞の脱穎粒などの一連の多彩な変化を含む。微小循環障害は心脳血管障害のみならず、糖尿病の血管合併症、肝腎機能障害、婦人科疾患にも関連する。中医学では、微小循環障害に対して漢方と鍼灸を用いて治療し、良い臨床効果が得られているが、そのメカニズムに関してはまだわからないところが多い。そこで、著者は1991年より、慶鷹義塾大学医学部消化器内科にて、倒立型生物顕微鏡に接続したCCDカメラ、蛍光カメラなどの微小循環観察システムを用い、FITC標識アルブミンによる血管透過性の観察、DHR蛍光色素強度変化による局部活性酸素の産生部位と産生動態の観察などの方法により、種々の原因による微小循環障害動態の変化を経時的に観察し、さらに漢方、鍼による予防と治療効果、そのメカニズムについて検討したので、その成績の一部を紹介する。