著者
佐藤 万代 山崎 翼 上坂 梨沙 音田 愛 矢野 忠
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.157-167, 2012 (Released:2012-08-06)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2

【目的】近年、 ストレスや生活の乱れなどが心身にさまざまな影響を及ぼし、 その結果、 肌状態の悪化を自覚する女性が増加している。 このような背景から、 局所的なケアだけでなく、 全身の健康増進を通して美容効果を得ようとする鍼灸治療が注目され、 「美容鍼灸」 という一つの分野として職域的に拡大している。 本研究では、 肌の不調を自覚する健常成人女性に鍼治療もしくは指圧療法を行い、 肌状態への効果と介入方法の特性について検討を行った。 【対象と方法】対象は肌の不調を自覚する健常成人女性14名とし、 鍼治療群7名と指圧療法群7名にランダム割付けした。 介入期間は4週間とし、 各群ともに週2回の介入を行った。 評価は介入期間の前後とし、 主観的評価として主観的健康感、 身体的・精神的疲労VAS、 ナーリス気分テスト、 肌状態アンケートを、 客観的評価として皮膚色調 (L*値、 a*値、 b*値)、 メラニン指数、 Hb指数、 HbO2指数、 角質細胞面積、 三次元画像変位量によるたるみ、 レプリカ (目尻・鼻唇溝) 解析によるシワ面積率、 および、 印象について評価を行った。 統計処理は、 2群の介入前比較には対応のないt検定を、 介入前後の群内比較には対応のあるt検定を用いた。 【結果】客観的評価においては、 両群の背景因子には有意差は認められなかった。 鍼治療群では主観的なシワ、 たるみ、 肌状態の有意な改善、 客観的評価では左鼻唇溝のシワ面積率減少傾向を認めた。 指圧療法群では主観的な皮脂、 ナーリス気分テストの有意な改善、 客観的評価ではL*値、 HbO2指数の増加傾向、 b*値、 メラニン指数の低下傾向を認めた。 【考察・結論】鍼治療はシワなどの形態的変化を、 指圧療法は皮膚色調を変化させる可能性が考えられた。 効果が異なる理由は不明だが、 介入の違いによるものと考えられた。 本研究は主観的、 客観的評価を用いて美容鍼灸の効果の一端を明らかにしたものであり、 意義のあるものと考えられた。