著者
天野 百々江 大野 睦子 須田 隆一 飯田 聡子 角野 康郎 小菅 桂子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.129-139, 2008-08-20
被引用文献数
1

インバモはササバモとガシャモク間の自然雑種である.福岡県北九州市のお糸池では国内で唯一,絶滅危惧種ガシャモクとインバモが野生状態で継続的に生育しているが,近年,これらの個体数が減少しつつある.お糸池の現存個体と博物館所蔵の過去の標本を用いて,インバモの交配の方向と形態的特徴を調べた.核遺伝子adhと葉緑体遺伝子rbcLを解析した結果,インバモにはガシャモクを母親とするD型とササバモを母親とするM型があり,両者は葉の形態である程度区別できた.お糸池では,過去にD型のインバモが採集されているにもかかわらず,現存するパッチはすべてM型であった.栽培実験では,ガシャモクはササバモに比べて渇水時の生存能が低く,M型のインバモはササバモと同様に渇水時の生存能が高かった.お糸池では,近年,透明度の低下や渇水が起こっており,このような生育環境の悪化により,D型のインバモは選択的に生育できなくなった可能性がある.
著者
真鍋 徹 須田 隆一 清水 敬司
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.121-125, 2017 (Released:2017-12-31)
参考文献数
21

絶滅危惧沈水植物ガシャモクの北九州市の自生池での保全に向け,池底から60 cm深までの底泥コアを採取し,深度別に種子や殖芽の有無を調査した.その結果,池底から40 cmまでの底泥から種子が確認され,その多くは10~30 cmの層に含まれていた.それら種子には発芽力のあるものも含まれていた.そこで,池底から80 cm深までの底泥を20 cmごとの深度別に層化して採取し,撒きだし試験を行ったところ,20~40 cmの層からガシャモクが発生した.最初に確認された時点で発生個体はシュート状であったこと,発生後は旺盛に生育したことから,当該再生個体は殖芽に由来するものであると推測された.従って,自生池では,種子および殖芽から成る散布体バンクが形成されているものと判断された.