著者
真鍋 徹 川窪 伸光
出版者
北九州市立自然史・歴史博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は、身近であるが日常的な生活リズムでは認識しにくい自然現象を、インターバル撮影によって一次映像資料として記録し、二次映像資料として編集し、活用するまでの一連の手法の構築を目的としたものである。短時間スケールの現象として照葉樹極相林の林床における光環境の日変化や中時間スケールの現象として水落しによる溜池の水量の変化を「視覚化」するための現地撮影等を実施し、短時間及び中時間スケールの撮影手法はほぼ確立することができた。さらに、これら現地撮影で得られた一次映像資料を展示用画像とするための編集手法を検討し、当該自然現象の「知覚化」のための編集手法もある程度構築できた。
著者
真鍋 徹 石井 弘明 伊東 啓太郎
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.1-7, 2007-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
64
被引用文献数
12 8

都市緑地は, 都市住民に対するレクリエーション, 防災, アメニティー, 環境調節機能や, 都市に生育・生息する野生生物に対するハビタット, コンジット, シンク機能など, 多面的機能を持った存在である.これら緑地空間の持つ機能を効率的に活用するには, 新たな緑地を創出するよりも, 現存する緑地を活用するほうが, 技術面・コスト面からみても有効であると考えられる.その地の潜在的な植生の姿を現在にとどめるような自然度の高い社寺林は, 都市緑地の効果的な維持・管理に向けての中核的存在となり得ることが期待できる.社寺林の生態学的研究は植物社会学的手法による群落記載に端を発した.その後, 社寺林を孤立林として認識し, 孤立した社寺林の群集構造・動態, 生息・生育地機能, 物理的環境要因を評価した研究へと発展した.また, 最近の研究結果から, 社寺林の構造・動態には, 社寺林内外の管理様式や神仏分離・都市公園法などの政策といった社会的要因も関与していることが示された.社寺林の機能を評価するためには, 広域的な景観スケールで社寺林を捉える必要がある.また, 生態学的要因のみならず人文科学的・社会科学的要因も考慮しなければならない.さらに, 都市緑地の中核的存在として社寺林を活用するには, 人による管理が必須であることが, 科学的な根拠の基で主張できるようになってきた.社寺林に限らず, 今後の都市緑地の保全・管理においては, 多様なスケール・手法を用いた個々の研究を蓄積し, 有機的に統合することが重要であるといえる.
著者
真鍋 徹 須田 隆一 清水 敬司
出版者
日本景観生態学会
雑誌
景観生態学 (ISSN:18800092)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.121-125, 2017 (Released:2017-12-31)
参考文献数
21

絶滅危惧沈水植物ガシャモクの北九州市の自生池での保全に向け,池底から60 cm深までの底泥コアを採取し,深度別に種子や殖芽の有無を調査した.その結果,池底から40 cmまでの底泥から種子が確認され,その多くは10~30 cmの層に含まれていた.それら種子には発芽力のあるものも含まれていた.そこで,池底から80 cm深までの底泥を20 cmごとの深度別に層化して採取し,撒きだし試験を行ったところ,20~40 cmの層からガシャモクが発生した.最初に確認された時点で発生個体はシュート状であったこと,発生後は旺盛に生育したことから,当該再生個体は殖芽に由来するものであると推測された.従って,自生池では,種子および殖芽から成る散布体バンクが形成されているものと判断された.
著者
山本 進一 真鍋 徹
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.13-20, 1997-06-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

水俣JIBP(国際生物学事業計画日本委員会)特別調査地域の常緑広葉樹二次林に1991年の大型で非常に強い台風19号によって形成されたギャップ,および台風前に形成されたギャップと,そこでの樹木置換パターンについて調査した。台風前に形成されたギャップがヘクタールあたり3.3個,その平均面積が31.2m^2であったのに対して,台風によって形成されたギャップはヘクタールあたり6.7個,その平均面積は230m^2と台風前に比べてより多くかつより大きなギャップがこの台風によって形成された。台風前のギャップ形成木は単一の林冠木の枯死であったが,台風は複数の林冠木の同時枯死をひきおこした。台風前の林冠木の枯死状態は立ち枯れが主であったが,台風によって枯死した林冠木の多くが幹折れであった。多くのシイの林冠木が台風による幹折れによって枯死したが,そのギャップ更新木はわずかであった。イスノキとウラジロガシは林冠木として出現しないか,してもわずかであったが,ギャップ更新木として頻繁に出現した。したがって,台風による攪乱はこの林の林冠層におけるシイからウラジロガシとイスノキへの優占への変化を加速させるようである。