著者
須藤 嵩文 井川 資英 山田 聡
出版者
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.82-95, 2020-06-30 (Released:2020-06-26)
参考文献数
37

歯周ポケット測定の際の出血(BOP)は歯肉炎症の有無を反映するものの,炎症の程度を詳細に反映するものではない。本研究は,ヒト歯肉血行動態,具体的には組織酸素飽和度(StO2)と血流量(BF)の同時測定を行い,その結果と歯肉炎との関連を明らかにすることを目的とした。測定には東北大学病院歯科部門歯周病科外来に通院される合計13名の患者(年齢29~82歳)の協力を得た。測定対象とした前歯部唇側歯間乳頭歯肉(n=33)のBOP判定を行い,近心部と遠心部の両方で出血しなかった場合をNB群(n=14),どちらか一方が出血した場合をB群(n=8),両方で出血した場合をBB群(n=11)の3群に分類した。StO2とBFの測定は対象歯肉のブラッシング前とブラッシング後の合計2回行った。測定の結果,ブラッシング前,BB群はNB群に比べStO2と酸化ヘモグロビン量(HbO2)が有意に低下していた。また,ブラッシングによって,BB群はNB群に比べStO2及びHbO2が有意に増加した。本研究では,StO2とBFの同時測定によって健全歯肉と炎症歯肉での局所血行動態の違いを明らかにした。また,ブラッシング前後のStO2の推移が健全歯肉と炎症歯肉で異なることから,歯肉血行動態の測定が歯肉の炎症の定量的評価法となる可能性を示唆した。