著者
須藤 文 安永 悟
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.474-487, 2011 (Released:2012-03-27)
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究では, PISA型読解力の育成を目的に, LTD話し合い学習法に依拠した小学校国語科の授業を設計し, その有効性を検討した。LTDは8ステップからなる過程プランに従って読書課題を読解する学習方略である。個人で行う予習と集団で行うミーティングとで構成されている。本実践では, ステップごとに予習とミーティングを授業時間内で実施した。対象児は同一の公立小学校5年生2クラス52名, 対象単元は説明文(全15時間)であった。授業は, 単元見通しや課題明示など協同学習の基本事項を考慮しながら実施した。学習成果は, PISA型読解力の「情報の取り出し」を測定する「基礎テスト」と「解釈・熟考・評価」を測定する「活用テスト」, 学級集団の特質を測定する「Q-U」で検討した。実践結果を比較対象群(他の公立小学校2校6クラス182名)の結果と比較したところ, LTDに依拠した授業の結果, 活用テストの成績が比較対象群よりも有意に高く, もともと成績が低かった児童の伸びが大きいことが確かめられた。また, 「Q-U」の結果から「学級の雰囲気」「学習意欲」と「承認」が改善され, 学び合える学級集団が形成されていることが確認された。