著者
須藤 賢司
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.137-144, 2009-07-10 (Released:2015-06-04)
参考文献数
18
被引用文献数
1

放牧営農に際しては飼養頭数、放牧方法、自給飼料の栽培面積等について最適な組み合わせを考える必要があり、実際、放牧酪農経営は多様性に富んでいる。この点を踏まえ、循環型酪農における放牧の役割について考察した。放牧導入には牛舎周辺への草地の集積が前提となるが、ここで生産される放牧草を短い草丈で利用すれば、貯蔵飼料よりも栄養価を高く維持でき、輸入濃厚飼料の給与量を減らせる。放牧では、牛にできることは牛にやらせることが基本であり、粗飼料の収穫調製と牛舎での給与ならびに糞尿処理作業に関わる労力・機械費・燃料が軽減され、従事者のゆとりが増す。北海道十勝地域で実測した値等をもとに行った試算では、放牧草採食量を13-15kg(乾物)確保し、舎飼期も粗飼料を活用する飼養体系を採った場合、以下の点が明らかになった。①圃場面積は経産牛1頭あたり約70aを要すること、②これらの値は環境保全を考慮して算定された経産牛1頭あたりに確保すべき糞尿還元面積とほぼ一致し、物質循環性は保たれること、③輸入飼料価格高騰の影響を緩和でき、持続的農業生産の観点からも有利なこと。放牧地面積が充分でなくとも、放牧時間を短縮することにより放牧導入は可能である。ただし、過放牧や牧区内の不均一な利用による糞尿成分の系外への流出防止に配慮する必要がある。環境保全が重視される点は放牧酪農でも変わりはなく、単位面積あたり放牧頭数と放牧時間の設定に留意すべきである。今後は、放牧の環境への影響をモニタリングし、定量化する技術の研究が望まれよう。
著者
三枝 俊哉 西道 由紀子 大塚 省吾 須藤 賢司
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.10-19, 2014

放牧によって草地から減少する肥料養分量を肥料換算養分の減少量と定義し,道東でこれを測定した結果,その値は既往の集約放牧草地における施肥適量にほぼ等しかった。また,これを用いて算出した放牧草地の養分収支は,放牧期間の前後における土壌中有効態養分含量の変化を概ね良好に説明した。そこで,北海道内延べ48牧区において,放牧による肥料換算養分の減少量を測定した結果,その値は地域性や草種特性によらず,被食量に規定されていた。そこで,48牧区全体の平均値と標準偏差を用い,道内全域に対応する乳牛集約放牧草地における窒素の施肥適量を,掃除刈りによる養分搬出のない条件で,マメ科牧草混生草地では年間4±2g/m<sup>2</sup>,イネ科牧草主体草地では8±2g/m<sup>2</sup>,リン酸およびカリウムのそれは草種構成によらず,年間3±1g/m<sup>2</sup>および5±1g/m<sup>2</sup>と提案した。
著者
須藤 賢司 落合 一彦 池田 哲也
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.386-392, 2001-10-15
被引用文献数
8

メドウフェスク(Mf)を搾乳牛の集約放牧用草種として評価するため, Mf草地とペレニアルライグラス(Pr)草地の産乳性を比較した。両草地に春分娩牛を各4頭ずつ昼間放牧し, 夜間放牧地と組み合わせて, 5年間にわたり毎年約180日間昼夜放牧した(Mf区, Pr区)。その結果, 両区牛群の日乳量, 乳成分, ボディコンディションスコア, 血液成分および放牧依存率には大差がなかった。また, 両区におけるha当たり産乳量はともにFCMで8, 500kgに達し, Mf草地にはPr草地と同時の産乳性があることが明らかとなった。一方, 試験1年目を除く放牧期間中の飼料自給率は, 両区ともに60%以上を示し, 集約放牧の効果と考えられた。