- 著者
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本間 清一
頼澤 彩
村田 容常
- 出版者
- お茶の水女子大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2000
コーヒーの試料として大量に入手でき、保存ができるインスタントコーヒーを選び、コーヒー亜鉛複合体を以下のとおり調製した。pH4.0,10mMのヘキサミン緩衝液(10mM KClを含む)にコーヒーを溶かし、終末濃度20mMになるようZnCl_2を加え、生じた沈殿を集めた。沈殿の1%アンモニア可溶性画分を(Sample AP)した。ApをAmerlite410とAmberlite IR120にかけ、水と1%アンモニアで溶出し、Zn含量の高い画分を塩酸で酸性にして生じた沈殿を遠心分離した。この沈殿物質をセルロースカラムにかけイソプロパノール-1%アンモニア水の系で展開し、混合比3:2で溶出される画分が最もZn-キレート能力の高い(-log kd=8.6×10^<-9>)画分(Ap-V)であった。の分子サイズは48kDで構成成分は30.4%のフェノール、糖とアミノ酸がそれぞれ3%と4%、ケルダール法による窒素含量が10%を越えた。リンが殆ど検出されなかったのでZn-キレート性成分の形成にメイラード反応とフェノール化合物の酸化分解や重合の関与を推定した。高分子のAp-V画分の構成成分を推定するために、アルカリ溶融分解を行い中性と酸性画分に主要な分解物が回収されてくることを確かめた。3D-HPLCとLC-MSによる解析の可能性を見いだした。キレート成分の生成する要因を調べるためコーヒー生豆の熱水抽出液乾燥粉からインスタントコーヒーと同様にキレート成分を精製した。Ap-V全量中の亜鉛含量は生豆よりインスタントコーヒーの方が多かったが、1g当りの亜鉛含量は生豆の方が多く、生豆は多くのZnをキレートすることが示唆された。インスタントコーヒーのAp-Vは、470nm吸光度が高い値を示し、生成に焙煎が関与している可能性が高い。生豆のAp-Vでは280nmの吸収も確認され、また生豆試料をトリプシン処理したもののキレート能を比べるとAp-V全量中の亜鉛含量が極端に減少したことから、生豆の亜鉛キレート性成分は約13,000Dと約10,300Dのタンパク質である可能性が示唆された。コーヒーを飲む時、乳脂肪やタンパク質の多いクリームを加えて飲むことが多い習慣をふまえ、熱いコーヒーにミルクを添加したサンプルからAp画分を調製したところ、コーヒーのみから調製したAp画分より亜鉛含量が低かった。そのため、乳成分はコーヒー成分と複合体をつくることにより、コーヒーのキレート作用を抑制することがあると考えられる。