著者
飛田 あゆみ
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

1.全員が原爆被爆者である、長崎Adult Health Study集団を対象としてシェーグレン症候群に関する調査を行った。1)男性432例、女性662例、計1094例から同意を得られた。平均年齢は71.8歳だった。2)眼球乾燥症状は168例(15.4%)で陽性、口腔乾燥症状は283例(25.9%)で陽性、いずれかの症状をもつものは358例(32.7%)だった。3)涙液分泌量検査(シルマーテスト)は992例で実施し、涙液分泌量が低下していたのは369例(37.2%)だった。4)唾液分泌量検査(サクソンテスト)は990例で実施し、唾液分泌量が低下していたのは198例(20.0%)だった。5)涙液または唾液いずれかの分泌量が低下していたのは484例(48.3%)だった。6)血清学的検査は1094例で行い、抗SS-A/Ro抗体は40例(3.7%)で陽性、抗SS-B/La抗体は14例(1.3%)で陽性だった。7)ローズベンガル染色検査は283例で実施し、3点以上は142例だった。8)唾液腺エコー検査は389例で実施し、55例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。9)唾液腺MRI検査は180例で実施し、11例でシェーグレン症候群を疑う所見があった。また、耳下腺に脂肪沈着を証明できたのは50例だった。2.上記検査の結果を総合してシェーグレン症候群と診断されたのは33例で、調査参加者1094例の3.0%だった。統計学的に放射線被曝線量との有意な関係はなかった。3.唾液分泌量と放射線被曝線量に統計学的に有意な負の相関があった。
著者
赤星 正純 飛田 あゆみ 今泉 美彩 瀬戸 信二
出版者
(財)放射線影響研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

放射線影響研究所・長崎研究所では原爆の後影響を縦断的に調査する目的で、1958年より原爆被爆者7,564名(男性3,374名、女性4,190名)を対象として、2年に一度検診を行っている。1958年から2003年(平成15年)までに死亡したり、他市へ転居したりしたために平成15年と16年に実際に受診した対象者は1,691名(男性586名、女性1,105名)である。この対象者で、問診、診察、身長・体重測定、血圧測定、一般検血、生化学検査(血清コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪、尿酸、血糖、CRP、インスリン)、腹部超音波検査、心電図検査、脈波速度測定を行い、このうち325名ではアディポネクチン測定を行った。肥満度が大きいと血圧、中性脂肪、LDL-コレステロール、尿酸、空腹時血糖、HbAlcが高く、逆にHDL一コレステロールは低値であった。肥満に伴いHOMO-IRは高くなり、インスリン抵抗性が増大する事が示唆された。肥満者では脈波速度の増大を認め、肥満に伴い動脈硬化が進展していると考えられた。また肥満者では脂肪肝の合併が多く、この脂肪肝では高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロール、耐糖能異常、高尿酸血症を伴い、アディポネクチンが低下していた。脂肪肝ではアディポネクチンの低下によりインスリン抗性が増大する事で高血圧、高中性脂肪、低HDL-コレステロール、耐糖能異常、高尿酸血症を合併し、動脈硬化が引き起こされると考えられた。原爆被爆で脂肪肝が増える事により、被爆者では脈硬化が進展し、心筋梗塞の増大が認められると考えられた。