著者
依田 明 飯嶋 一恵
出版者
横浜国立大学
雑誌
横浜国立大学教育紀要 (ISSN:05135656)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.117-127, 1981-11-30
被引用文献数
1

出生順位と性格特性との関連について,1963年におこなった調査をもとに,その年代的変化を検討するために,再調査を実施した。2人きょうだいの小学校5年の児童と,その親187組を対象に,質問紙によって調査した。性格特性に関するデータは,51項目の日常生活における行動の記述が,きょうだいのどちらによりあてはまるかという,相対的判断を求めることによって得た。再調査の結果,次のようなことが見出された。(1)長子的性格・次子的性格の存在は,非常に明確に検証された。しかも,1963年調査時の結果と比較して,ほとんど変化がみられず,固定化したものと言える。男子的性格・女子的性格についても,ほぼ同様のことが言える。(2)きょうだいの年齢差が近いほど,長子・次子の性格特性の差異は,はっきりとあらわれない。(3)日常生活において,長子が次子から,きょうだい内の地位をあらわす普通名詞で呼ばれている場合の方が,固有名詞で呼ばれる場合よりも,性格特性の差異が明確にあらわれる。以上,再調査の結果は,ほとんど,20年前の1963年調査と一致している。この事実は,家族やきょうだいに関する文化は,表面的な社会的変動の影響をほとんど受けていないということを示唆している。また,長子と次子の生育環境も,この20年間に,大きな変化はみられないと言える。