著者
土田 哲人 縣 潤 南場 雅章 遠藤 利昭 安藤 利昭 四十坊 典晴 佐々木 真由美 飯村 攻 平賀 洋明
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-41, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
14

心臓サルコイドーシス (心サ症) では心室中隔の障害とこれによる菲薄化が特徴的であるが, 左室肥大例も報告されている. そこで今回, サ症確定診断例において心臓超音波法および心筋シンチグラム上異常所見を示した連続70症例を対象に, 左室肥大例の出現頻度, 臨床的・病理学的特徴について解析した. 左室肥大は20例 (29%) に認められ, 中隔菲薄型31例 (44%) に次いで多い形態異常であった. 超音波上, 特発性肥大型心筋症 (HCM) と類似した左室中隔肥厚 (ASH) を伴う例が17例あり, また多くの例で中隔基部の輝度上昇を伴っていた. 10症例において心筋生検を施行したが, 光顕上, 心筋細胞肥大, 間質の線維化および脂肪変性を認めたがHCMに特徴的な心筋錯綜配列は認めなかった. 心サ症において左室肥大を示す例は稀ではないが, 形態的にはASHを示す症例が多く, HCMとの鑑別が問題になると考えられた.
著者
石本 朗 菊池 健次郎 浦 信行 岩田 至博 買手 順一 曳田 信一 椎木 衛 和田 篤志 飯村 攻
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.77-82, 1993

成人型溶血性尿毒症症候群の発症3か月後に血漿交換を施行し, 血液透析を離脱し得た1例を経験した. 症例は31歳男性. 22歳時健診で高血圧 (140/100mH) と診断されたが, 特に自覚症状もないため放置していた. 平成2年8月下旬より全身倦怠感, 息切れが出現し, 某病院にて重症高血圧, 溶血性貧血, 腎機能不全を指摘され入院加療を受けるも改善せず, 9月21日当科へ転入院となった. 入院時の検査で血小板減少, 微小血管障害性溶血性貧血を伴う急性腎不全を認めたため, 成人型溶血性尿毒症症候群と診断し, 直ちに降圧療法, 抗血小板療法, 抗凝固療法, 新鮮凍結血漿輸血と共に血液透析を開始した. その結果, 血小板減少, 溶血性貧血は間もなく改善したが腎機能不全は治療抵抗性で, 発症約2か月後にはほぼ無尿状態となった. 病態の改善を目指し, 発症約3か月後より週1回の血漿交換を併用したところ, 1日尿量は漸増して血漿交換開始2か月後には1,500m<i>l</i>以上に増加, Ccrも15.0m<i>l</i>/minまで改善し, 血漿交換中止後も同程度の腎機能が保持された. さらに発症約7か月後には血液透析を離脱し, 外来通院が可能となった. 成人型溶血性尿毒症症候群は, 幼児や学童にみられる典型例に比し重篤であり, 救命し得てもその約80%が慢性血液透析に移行するとされている. 一方近年, 発症早期からの血液透析の導入, 血漿交換療法, 新鮮凍結血漿輸血, 抗血小板療法, 抗凝固療法などの施行により, 腎機能不全が寛解した例も少なからず報告されている. 本症に対する血漿交換療法の有用性についての評価はいまだ確定していないが, 少なくとも本例ではその臨床上の有効性が示された. 殊に本例では, 発症後3か月以上を経た時期の血漿交換療法が腎機能の改善, 血液透析の離脱に大きく寄与したと考えられ, かかる報告例は未だみず, 貴重な1例と思われ報告した.