著者
光岡 知足
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.3-12, 2002-10-12 (Released:2010-08-06)
参考文献数
3

皮膚, 上気道, 口腔, 咽頭, 胃, 腸管, 膣, 尿道などには, それぞれ部位によって特徴的な常在細菌がすみつき, 常在菌叢を構成している. 常在菌叢と宿主との問, および, 常在菌叢を構成する菌種問には平衡関係が成立しているが, 何らかの原因でこの平衡関係が破れると, 潜在的に病原性をもっている菌が敗血症, 肺炎, 肺膿瘍, 肺壊疽, 腹膜炎, 胆嚢炎, 胆管炎, 肝膿瘍, 下痢, 腸炎, 口内炎, 扁桃炎, 脳膿瘍, 髄膜炎, 腎孟炎, 膀胱炎, 膣炎, 産褥熱, 心内膜炎, 中耳炎, 結膜炎, 軟部組織膿瘍など, いわゆる“日和見感染”を惹き起こす. 平衡関係の乱れは, 抗生物質やステロイドホルモンの投与, 外科手術, ストレス, 糖尿病, 過労・老齢などが原因となる. また, 腸内菌叢は, 多岐にわたる代謝を行う酵素をもち, その結果, 宿主の栄養, 薬効, 生理機能, 老化, 発癌, 免疫, 感染などに大きな影響を及ぼしている.
著者
土田 哲人 縣 潤 南場 雅章 遠藤 利昭 安藤 利昭 四十坊 典晴 佐々木 真由美 飯村 攻 平賀 洋明
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.37-41, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
14

心臓サルコイドーシス (心サ症) では心室中隔の障害とこれによる菲薄化が特徴的であるが, 左室肥大例も報告されている. そこで今回, サ症確定診断例において心臓超音波法および心筋シンチグラム上異常所見を示した連続70症例を対象に, 左室肥大例の出現頻度, 臨床的・病理学的特徴について解析した. 左室肥大は20例 (29%) に認められ, 中隔菲薄型31例 (44%) に次いで多い形態異常であった. 超音波上, 特発性肥大型心筋症 (HCM) と類似した左室中隔肥厚 (ASH) を伴う例が17例あり, また多くの例で中隔基部の輝度上昇を伴っていた. 10症例において心筋生検を施行したが, 光顕上, 心筋細胞肥大, 間質の線維化および脂肪変性を認めたがHCMに特徴的な心筋錯綜配列は認めなかった. 心サ症において左室肥大を示す例は稀ではないが, 形態的にはASHを示す症例が多く, HCMとの鑑別が問題になると考えられた.
著者
楠原 浩一 高田 英俊 原 寿郎
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.9-19, 2007-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
28

マクロファージ内における寄生菌の殺菌を担うIL-12/IFN-γ経路は, 結核菌をはじめとする抗酸菌に対する免疫機構の中できわめて重要な役割を果たしている. 近年, 明らかな細胞性免疫不全のないBCG重症副反応例や非結核性抗酸菌感染症患者の中に, 本経路のサイトカイン, サイトカイン受容体, シグナル伝達物質の遺伝子変異を有する症例が存在することが明らかになってきた. この一連の免疫異常症では結核菌に対する易感染性も認められる. 本稿では, 本邦で初めて見出された常染色体優性遺伝IFN-γ受容体1部分欠損を中心に, IL-12/IFN-γ経路異常症の各病型の臨床像, 病態生理, 遺伝子解析について述べる. また, 肺結核患者を対象としてIL-12/IFN-γ経路の関連分子を中心とした候補遺伝子のスクリーニングを行った結果, 日本人においてIL-12受容体β1遺伝子 (IL12RB1) の特定の多型が結核感受性や結核の重症度に関連していることが明らかになったので, その成績を併せて紹介する.
著者
池田 洋一郎 山口 哲生 山田 嘉仁 篠原 翼 河野 千代子 青柳 哲史 天野 裕子 鬼島 正典 黒瀬 信行 宮本 和人
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.65-69, 2004-10-01 (Released:2010-08-06)
参考文献数
9

小径線維ニューロパチー (small fiber neuropathy, 以下SFN) を認めたサルコイドーシス (以下サ症) の2症例を経験した. 71歳と67歳の女性が当院に紹介され, 2症例とも手足のシビレなどの症状を呈していた. 神経学的所見として, 両側上下肢遠位部に対称性の温痛覚低下を認めたが, 触覚, 関節位置覚, 振動覚は正常であった. 両者に発汗の低下と便秘がみられた. 神経伝導速度と針筋電図検査では異常は認められず, これらの所見は小径線維ニューロパチーに合致していた. 生検皮膚組織の末梢神経のPGP9.5とP75による免疫染色により, 皮膚組織の末梢神経軸索密度が正常と比して有意に減少し軸索障害が有意に増加していることが確認されSFNと確定診断した. 症例1は, ジクロフェナクや塩酸メキシレチンによって, 症例2は, 塩酸アミトリプチリンの投与で症状は軽減された. 従来, サ症の末梢神経病変は脳神経麻痺と多発単神経炎で代表されるとされていたが, この2症例の経験から, これまで考えられていたよりもSFNの合併の頻度は高いことが推測される. サ症にともなう多彩な神経障害の診断において, 神経伝導速度と皮膚生検はその中からSFNを鑑別する有意義な検査方法といえる.
著者
熊本 俊秀
出版者
日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.25-31, 2008-10-01 (Released:2010-08-12)
参考文献数
19
被引用文献数
1

筋肉サルコイドーシス, 特に腫瘤型における筋崩壊機序は, マクロファージ, 類上皮細胞及びリンパ球などの炎症性細胞が非壊死性筋線維内に直接浸潤してそこに小肉芽腫を形成し, 直接筋線維を崩壊することが主因であり, 機械的圧迫や虚血によるものではない. さらに類上皮細胞やマクロファージ由来のカテプシンB, m-カルパイン, ユビキチンープロテアゾームが筋の崩壊に重要な役割を果たす. 文献を基に急性筋炎, 慢性ミオパチーを呈する筋肉サルコイドーシスについて述べる. これまで腫瘤が四肢全体あるいは体幹の広範囲に進展した腫瘤型の報告例があるが, いずれも長期間にわたって筋力低下及び筋萎縮を認めていない. このことは, 慢性ミオパチーにおける筋の崩壊機構は腫瘤型と異なっている可能性がある. 急性筋炎, あるいは慢性ミオパチーの臨床所見, とくに進行性の筋力低下と筋萎縮を示す筋肉サルコイドーシスの中には皮膚筋炎, 筋炎-オーバーラップ症候群, 重症筋無力症などの自己免疫性ミオパチーと関連したものがある.
著者
慶長 直人
出版者
Japan Society of Sarcoidosis and other Granulomatous Disorders
雑誌
サルコイドーシス/肉芽腫性疾患 (ISSN:13450565)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-19, 2001

サルコイドーシスには, 病型や発症頻度に明らかな人種差があり, 古くからヒト白血球抗原であるHLAとの関連が報告されてきた. 近年のヒトゲノム計画の進行に伴い, 疾患感受性遺伝子の研究は新しい局面を迎えつつある. 新たに研究を始める研究者, 知識を深めたい臨床家へ向けて, HLAとの関連性から真の疾患感受性遺伝子を証明することと, HLA以外の候補遺伝子を検討することのための方法論につき, 我々の経験を踏まえ, 現状を報告したい.