- 著者
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飯村 耕介
- 出版者
- 埼玉大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2010
近年,海岸樹林の津波減災効果が注目されており,本研究では樹林モデルの高精度化のためにマングローブ林などの気根を有し,鉛直方向に大きく構造が変化する樹木を対象に,気根層を再現した植生模型を配置して水理模型実験を行い,上下層の密度比がもたらす流速や抵抗力への影響を明らかにした.植生模型は気根層を再現した植生模型(二層林モデル)とそれを鉛直方向に平均した植生模型(一層林モデル)の2ケースで検討した.二層林モデルでは樹高8mのマングローブ林の100分の1縮尺程度を参考に,高さの異なる直径2mmの木製円柱を組み合わせて配置した.下層部分の高さは20mmで円柱の中心間距離は8mm,上層の円柱の中心間距離は24mmとなる.一方,一層林モデルは直径5mmの木製円柱を24mm間隔で配置した.多くの研究,特に樹木抵抗を考慮した解析では,樹木の抵抗は水深積分化されて導入していることが多く,本研究の一層林モデルも二層林を水深積分化して与えている.二層林の下層部分は正三角形配置なので,その投影幅は円柱直径の6倍となり,投影幅を水深方向に平均すると4.5mmとなる.一層林ではこれとほぼ等価の幅を持つように5mm円柱を使用した.植生模型が無い条件に比べて,二層・一層林ともに植生帯前面で反射や堰上げにより最大水位が大きくなり,植生帯の背後で水位が低減した.二層林では下層部分に植生が偏って存在するため,一一層林に比べて植生帯前面での反射・堰上げの効果が小さくなった.二層林の場合は下層部の植生帯の密度が上層部に対して大きく,上層部で流れが加速し,下層部で流速が低下する.上層の流速は下層に比べて最大2.6倍となったが,植生帯全体における平均的な抵抗力は一層林のほうがわずかに大きい.そのため,植生帯前面での反射が大きく,抵抗もわずかに大きい一層林のほうが二層林に比べて背後における低減効果が大きくなることが分かった.