著者
山田 健史 飯田 和則 山子 茂
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.329-342, 2007 (Released:2007-10-01)
参考文献数
106
被引用文献数
1 1

リビングラジカル重合(LRP)が基礎,および応用化学の両面から多大な注目を集めている.その理由は,このような重合系の開発が化学における大きな挑戦であるとともに,ラジカル重合とリビング重合の優れた特徴を併せ持つこの方法が,高度な機能を持つ高分子材料創製の基盤技術となることが期待されているからである.本報では,この 15 年弱の間に開発されてきた,代表的な LRP 法であるニトロキシドを介するリビングラジカル重合(NMP),原子移動ラジカル重合(ATRP),可逆的付加・脱離連鎖移動重合反応(RAFT),有機テルル化合物を用いるリビングラジカル重合(TERP)を中心として,それらを重合機構から比較することで,それぞれの方法らの特徴を明らかにすることを目的とする.これを通じて,LRP の現状を概観するとともに,この方法の将来の展望を図るものである.本報は 2 回にわたり掲載される予定である.初回の本報では,LRP の定義とその開発の歴史的な経緯,共通する反応機構,および NMP の機構について紹介する.次論文では,ATRP, RAFT, TERP の反応機構と,LRP における最近のトピックスを紹介する予定である.