著者
村上 守良 六反田 篤 伊東 励 伊波 富夫 祐田 彰 小住 哲也 香月 俊祐 宮崎 秀夫 佐伯 栄一
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州齒科學會雜誌 : Kyushu-Shika-Gakkai-zasshi (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.32, no.5, pp.673-685, 1979-01-31

1964年から1965年にかけて沖縄で大流行した風疹は, 妊娠中であった母親に感染し, 罹患した母親から種々の障害を持った子が出生した.風疹の胎児感染による人体への影響について種々の分野から多数の研究報告がなされ, 長骨の異常, 生歯の異常などが指摘されている.口腔領域の研究報告は少く, 未だ多くの疑問が残されたままとなっている.著者らは発症後12年を経過した昭和52年8月, 沖縄における先天性風疹症候詳児104名(男55名, 女49名)について, 口腔診査, 上・下歯列の印象採得, X線撮影を行ない乳歯残存状況について検討した結果, 次のごとき結論をえた.1.乳歯残存保有者率は男47.27%, 女40.82%, 男女合計44.23%である.2.乳歯残存歯率は男6.27%, 女4.80%, 男女合計5.58%である.3.一人平均乳歯残存保有歯数は男1.25本, 女0.96本男女合計1.12本である.4.1∿4歯の乳歯残存保有者が男40.00%, 女38.78%, 男女合計39.41%で, これは乳歯残存を有するもののうち約90%をしめている.5.歯種別, 顎別の乳歯残存歯率は, 正常児に比し, 第二乳臼歯の残存率が男女とも上・下顎において特に高率である.6.乳歯残存の後継歯の存在率は乳犬歯で, 男86.05%, 女94.29%, 男女合計89.74%, 第一乳臼歯では男85.71%, 女100.00%, 男女合計91.67%, 第二乳臼歯では男89.47%, 女100.00%, 男女合計92.31%である.7.先天性風疹症候詳児は正常児より, 乳歯の晩期残存が多数みられ, 永久歯の萌出が遅滞している.